陽炎(26)
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物流学会は神奈川県にあるY市立大学で行われた。京浜急行にはあまり乗ることはないが、最初の室長はこれで通勤していた。とりあえず、運輸省の委託調査を参考にしたものだが、その文章は自分で書いたものなので「自作自演」と言ってもよかった。天竜浜名湖鉄道と岩徳線が非電化、赤穂線と呉線は電化されているものの単線、従って東海道・山陽並みの輸送力は期待薄であること、途中駅と最寄の高速道路インターチェンジのアクセスが鍵になるということに触れた。
N社旅行事業部にはJ航空、A空輸、D航空に海外の主要エアラインのホームページと航空券予約の有無、定期航空協会や旅行業協会へのヒアリングをまとめた。おそらく、新しく参入しようとしているところも既存の会社との競争上、インターネットによる直接販売戦略を取る可能性が高いことも触れた。アメリカでは既存のメジャーがコンピュータ予約システムを整備して旅行代理店を囲い込み、新規の会社がシステムを利用する場合には高い手数料を取るにもかかわらず、画面表示では不利な扱いということが司法省から「独占禁止法違反」と指摘されていた。
物流学会の次は交通学会に航空券直接販売で発表しようと考えた。そして物流学会で報告した鉄道貨物の迂回輸送については、さらに山陰周りや東京・札幌での常磐経由なども含めて取り上げてみたいと申し出た。季刊誌への寄稿を花道に大学転身という意図もあったが、掲載は翌年の春か夏というところだった。
結婚に向けての話のほうは大阪に戻って関西空港にまで行き、仕事を続けてもいいこと、新居は互いの通勤に不便とならない場所、新婚旅行は海外ということを持ち出した。一緒になるとしたら私が大学に移ってからになるのも決めた。阪神大震災があって私は移動式の通信手段としてパーソナルハンディホンを使うようになった。携帯電話よりも割安で、これは彼女ももっていたので番号を交換した。
下半期は北九州の仕事の他にトラック輸送に関する調査や羽田の国際化に関する調査に加わった。「トラフィック・オペレーションリサーチ」の研究会ではJ航空の新しい本社ビルを見学する機会を得た。国内・近距離国際・長距離国際の運航状況が一目瞭然でわかるパネルは興味深かった。たまたま峰岸が同行した。彼は帰り際に「トイレ行きたいから先に戻ってて」と言い、私は先に職場に戻った。彼はなかなか戻らず、夜になって温水洗浄便座に腰掛けたまま眠っていたのを警備員に起こされた。
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