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2018年11月20日 (火)

青春の旅立ち(5)

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m

 秋の市民大会は勤務明けだった。会社のゼッケンをつけて臨む試合は九月の内部での大会以来である。これは個人戦で清二は大卒新人と戦い、延長までもつれて小手で敗れた。小手から胴への変化を封じられたショックは大きかった。実業団の団体メンバーになるにはもう少し試合経験を重ねて実績を残す必要があった。

 会場に着いたのは昼前である。駐車場は体育館から少し離れた場所、早めに牛丼のランチを済ませた。例年どおり午前中は小中学生の試合である。高校生は会場の手伝いだった。母校では伊藤の他に井上・遠藤・山尾が入り、山尾は高校からの初心者である。十代男子は32人、品川も晋一も二十代に移った。今回副顧問はエントリーしなかった。

「決勝までがんばろうな」

 野村が声をかけてきた。彼と当たるのは決勝である。「一戦ずつ集中だよ」と清二は応じた。野村は春の大会では世良と初戦であたり、面で一本負けした。世良の胴に返すよりも早く世良の竹刀が野村の頭を打ちすえていた。今回、社会人は清二だけだった。初戦の相手は山尾である。夏休みに一度だけ母校を訪ねたが、面を着けてまもないこともあって打たせるだけだった。

 清二の試合は三番目だった。山尾がまだ新しい剣道着に道具は使い込まれたいでたちで進み出た。少しでも強そうに見せるには効果的という演出である。清二のつけたワインカラーの胴も右側はすっかり曇ったが、左はまだ顔が写る状態である。面や垂れの端は擦り切れていた。

 山尾は立ち上がりに掛け声を大きく出し、少しずつ間を詰めてきた。清二は出るタイミングを見定めて面に合わせた。木曜日の夜以来の稽古であるが、一本になった。二本目は小手・面の連続を受け止めた。山尾は清二の胴を叩いて離れ、清二は引き面を浴びせた。これはどちらも不十分である。

 山尾が反時計回りに旋回してせめて来た。清二はまだ面のスピードが足りないと判断して振りかぶった瞬間に右斜め前に踏み込んで胴を抜いた。山尾の着けた黒胴が鈍くはじける音を立て、審判は一斉に旗を上げた。

「今の力は十分出してた。あとは鋭さだ」

 副顧問が山尾に言うのが聞こえた。次の相手は面抜き胴と出小手でストレート勝ちした村松に決まった。野村も商工の一年生に面返し胴と出小手を決めて二回戦に、母校では赤崎、井上、伊藤も一回戦突破である。

 

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