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2018年10月30日 (火)

十五の春

ちょっとだけ創作意欲が・・・ということでスタートいたします

 早春の日差しがそそぐ街にジェット機の音が降っている。紺色の生地にボタン五つの制服を着た清二は防具と竹刀の袋を抱えてY高校の正門をくぐった。教育大付属中学を卒業したばかりの清二は県立高校に推薦で入ることになった。幼稚園年中のときから二歳上の兄と一緒に剣道を始め、中三の夏は全国と地方の大会に個人での出場を果たした。それは奇跡ともいえる快挙と誰もが思った。やはり他県のレベルは高く、地方では初戦敗退、全国は一回戦で勝ち残れたものの、二回戦で散った。

 推薦入試は二月に行われ、定員240人のうち40人の枠だった。剣道では男子が清二のみ、女子は二人が合格した。推薦でだめだったら一般という腹積もりだった。兄も付属中だったが一般でY高校に進み、剣道を続けた。兄よりも弟のほうが強いねと言われているのを兄はどう感じているのか。口には出さないのでわからなかった。

 推薦入試は作文と実技だったので、週一回の武道の授業と必修クラブに加えて正月のY高校での稽古初めなどで竹刀を握った。普段の素振りは三八竹刀で行って高校の剣道に備えた。一般入試の翌日には中学の卒業式があり、そのあとは高校の部活に参加することが認められた。

 武道場は二階建ての体育館の一階だった。玄関を入り、道場の手前にあるトイレに入った三つ並んだ個室の一番奥の洋式は「故障中」の張り紙があり、真ん中の個室に入った。茶色いが三本、平たい水溜りに横たわると股間が膨れ上がった。付属小学校の低学年の女の子を見たときもこんなことが起きてそのたびに清二はトイレにこもった。

 流し終わって個室を出ると丁寧に手を洗った。更衣室で着替えているとき先輩の部員はまだだった。新二年生が五人、新三年生が四人、女子は各学年三人ずつである。入学したら道場のモップがけや窓の開け閉めをすることになるが、それはまだ新二年生の役目だった。

 九時から準備運動と素振りが始まった。なにもない土曜日はこの時間にスタートである。一般入試合格発表までの間、新一年生が何人になるのかは検討がつかなかった。推薦で合格した二人の女子も現れてあとは顧問の六段を持つ先生、さらに卒業生も来ることがあった。

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