白い闇(27)
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Lシティに滞在している間は前回訪れた科学博物館や新たにできた観光スポットを回った。二十五年の間にオリンピックが行われ、そのスタジアムも見た。アクセスは従来の地下鉄か ら分岐したモノレールである。О市と同じ四両編成でレールをまたぐ方式、銀色に青と白のラインという車両である。
R市に向かう高速列車が北駅を出るのは午後五時だった。241キロを一時間二十分で走るダイヤである。途中停車駅は190キロ地点のM駅のみで、ここは自動車や航空機などの産業が集積していた。列車は七両編成でLシティ寄りの二両が一等車、ワインレッドの車体で先頭は運転席の後ろが「特等席」という仕様である。
座席は三両目の左側なので前方視界を楽しめないのが残念だった。平日なのでスーツ姿の客が多いが、座席の埋まり具合は半分程度である。高速列車は一時間に二本運転され、停車駅の多い普通電車もあった。こちらはクリームとマリン日ルーのツートンという車体で、座席指定が一等の代わりを果たしていた。
発車すると左をループの電車、右をО市に向かう高速列車が並走した。ループは一キロほどで次の駅となり、そこを出ると左に去った。右の列車とはしばらく並んで速度を上げ、発車から三分くらいして離れていった。コンテナの液が右手に見え、スピードが200キロになったかなというところで川を渡った。
低く垂れ込めた雲が地面に近づき、窓の外がどんどん白くなって線路沿いに家々がぼんやり見える程度となった。列車はそれでも最高速度の240キロまで加速した。踏み切りはなく、駅のホームも立ち入りを規制しているという条件で勢い欲通過していた。窓の外は完全に白くなり、森林地帯を走っている気配が漂った。
M駅に近づくと自動車メーカーの看板が目に入った。港まで完成した車を運ぶための貨車が並び、M駅に到着した。ここから分岐する線路はかろうじて残っていたが、それは観光用の蒸気機関車のためのものである。駅を出てしばらく走ると右手に海が見えた。分かれた線路の先に自動車運搬の船が見えた。
石油精製工場や製鉄所の高炉の脇を通ってR駅に着いた。レールはまだ先があって海軍の基地となっているが、旅客はここまでである。ホームは高速列車用のホームが駅ビルに面し、ローカル列車が地下道を通って渡るという形になっていた。M市までは一時間に三本で、うち一本はLシティに向かうというダイヤだった。
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