白い闇(23)
二十五年過ぎて・・・ということで
前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m
夏休みに入ってすぐO市を訪ねることにした。朝十時にF航空に乗り、十時間のフライトでF国の首都で乗り継いだ。待ち時間は三時間、フライトタイムは二時間である。150人乗りの小型ジェットは暮れなずむO空港に舞い降りた。戦闘機も対潜哨戒機も昔のまま並んでいたし、ターミナルビルも変わらなかった。
記念に持っていたカードにチャージしてモノレールに乗った。この車両も昔のままだが、車体にラッピング広告が施されているのはやはり収入源を広げるのに必死なのだと感じた。沿線は昔と変わらないが、Jから分岐する単線の路線は廃線になり、跡地は道路に変わった。
キャンパスも変わっていないが、泊まるのはドミトリーではなく、O駅のホテルである。川沿いに出て高速道路をまたぐと左手にあった陶器工場は姿を消していた。市役所は昔のままで駅も変わっていなかった。二階の改札口からそのままホテルのチェックインカウンターに行き、四階の部屋の鍵をもらった。部屋はホーム側である。
翌日、市役所の「博士」を訪ねた。彼は観光部長に昇進していた。この二十五年で、製鉄も造船もなくなり、人口は二割減ったと嘆いていた。石炭火力発電所も老朽化を理由に閉鎖され、炭鉱も閉鎖された。残った産業は軍関係と農産物の加工品、観光のみである。とりあえずO城に足を運んだ。市役所の隣にある高校の姿も同じである。
城もまた昔のままだった。ツアー客の一行が見学していて、この人たちは港に入ったクルーズ船からである。鐘楼から見て気づいたのは貨物用の線路がなくなっていることだった。コンテナ列車はJ駅の横にある貨物駅までで、H市などに向かう貨物はトラックに積み替えられた。
とりあえず市役所の南まで行ってS駅行きの路面電車に乗ることにした。これも昔のままである。エレクトロニクス関係の工場が撤退したため、活気がなくなってしまったことに愕然とした。S駅に着いて陸橋に行ってみた。貨物用の線路はまだ残っているものの、架線は外され、レールは赤茶色にさびていた。
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