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2016年7月11日 (月)

帰郷(3)

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m

 一時間くらいで二十人近く相手して休憩になった。とりあえず練習試合をさせてもらうことになって三年生3人が審判、長男の相手は新キャプテンのKと尚樹に最初に掛かったYの二人である。そのあとにも二組試合が組まれた。それは一年で一番強いUと二年生の二人である。審判の他、部員の大半は面を外したまま見学となった。

 上空からジェット機の音が降ってきた。福岡空港に向かう便ならば下関の北から響灘に出るコースである。つい四時間ほど前にはA空輸の777から関門海峡を見下ろしたところだった。福岡空港に降りると新幹線の休日特別割引を使って小倉に移動し、そこからN中までタクシーだった。この飛行機はたぶん長崎か上海に向かうのだろうと思った。

「はじめ」

 u兄の号令でkとの試合が始まった。双子でいったいどちらが主審なのかは不明である。審判も垂れと胴だけ着けた状態だった。長男はぐいぐい間合いに入った。それは吸収と東京の違いを顕著に表していた。Kは左に回りこんでやむなく鍔迫り合いに持ち込む対応に出た。鍔迫り合いになるかどうかというところでKは引き面を放った。長男がブロックして竹刀のはじける音が響いた。

 間合いを明けたKは両腕を下げるとすぐに面を打って出た。再び間を詰めに前進していた長男は胴を抜いてすれ違った。Kの着けた黒胴が甲高い音をたて、審判も一斉に旗を上げた。見ていた者がどよめいた。一番強い者が抜き胴を奪われるのは驚きだったのかなと尚樹は思った。そして自分に似てこの技が得意ということをS学園の先生から聞いていたが、初めて実感した。

「二本目」

 審判の号令でkは時計回りに旋回した。長男はまた間合いを狭めて相手の打つ機会を封じた。このまま一本勝ちにする戦略もあるが、もう一本取る機会を狙うべきと思いながら見ていた。Kは小手・面で打ちかかり、鍔迫り合いになると様子を見てすっと間を空けた。航行では「十秒ルール」が適用されるようになり、それも意識してのようだった。長男も間は詰めなかった。ここでベタベタくっつくのは一番いやな剣風である。 

 長男が間合いを一気に詰めた途端、Kは左わき腹だけが空く体勢になった。長男がそこに切り込んで鈍い音が響いた。審判の旗はやはり動かず、Kが放った引き面も有効にならなかった。kの引き面に対しては拍手があった。そのあと互いに面に初めて出て竹刀同士のぶつかる音がして「時間切れ」となった。終わりの礼をすると次は待機していたYが進み出た。

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