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2016年7月11日 (月)

帰郷(4)

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m

 初めの礼の時にYへの応援の拍手が起きた。立ち上がったYは互いの剣先が接する前に反時計回りに動いた。その入り方は面返し胴を食らうぞ、と尚樹は思った。先革が触れるかどうかの位置からYは面に飛んだ。長男は左鎬でYの竹刀を受けるとその力を利用して彼が着けた黒い胴の右側面に自分の竹刀の先の部分を叩きつけた。乾いた音が響き、振り向くと審判は三人とも旗を上げた。やっぱり、というようなため息を感じた。

「二本目」の号令と同時に長男は自分から間に入った。剣先がYの竹刀の中結びのところまで行って止まった。ちょっとした剣先の攻防が起きた。長男が面攻撃に出た瞬間、Yはさっきのお返しとばかりに剣先で小さくCの字を描くようにして右前方に踏み込んだ。メタリックの胴が甲高い音をたてた。鍔元に近い部分で切ったので一本にはならないが、N中サイドから拍手が起きた。

 互いに振り向いてすぐにYは小手・面の連続攻撃を仕掛けた。面を受け止めた長男の腕が上がり、空いた右わき腹にYが切り込んだ。 鈍くはじける音がしてYは長男のヘソ下まで引き切って間合いを開けると中段の構えを取った。副審をしているほうのUがまず旗を上げ、後の二人が続くと見ていた部員たちが大きな拍手を送った。

「勝負」

 主審の声が響くとYが遠い間合いから小手を狙った。それは単発ではなく次に行くのが本命の連続技である。長男が小手抜き面を打とうと振りかぶった瞬間、Yの竹刀は面ではなく胴に向かった。尚樹の目にまともにメタリックの胴を捉えたシーンが飛び込んだ。鮮やかな快音が道場に響き渡り、審判はすぐに有効と認めた。

「二本目で止まったのが、潮目だったな」

 尚樹のところに来た長男にそう言った。Kには「間合い苦しませたけど、関東の剣道はそういう感じ」とコメントし、Yには「小手・胴はすばらしかった」と告げた。Uの弟は二年生のレギュラーメンバー二人をそれぞれ面と小手、面と胴で破っていた。

※ 短いけど これで終わらせていただきます

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