下り坂(198)
前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m
「ところで・・・インドでの便器は日本と同じですかぁ」
「温水洗浄ですよ。現地のメーカーは昔ながらのスクワットですが・・・」
「足腰鍛えるにはそちらのほうがという意見もあるみたいですねぇ。それと排泄の姿勢も」
海外事業部長は苦笑した。それから当番幹事による余興がはじまった。生徒会長だった者は福岡市で裁判所の職員をしているそうである。昔の上下グレーの制服姿は今でも現役と変わらないじゃないかと喝采を浴びた。
「そういえば、ちょうど昭和から平成に変わる頃だったよな」
会場のどこかからそんな声がした。
総会の後は二次会ということだが、哲也たちの期はバラバラになった。哲也は剣道部に合流してN中のすぐそばの料亭に向かった。バスで片野まで移動して徒歩で五分ほどで着いた。
長年OB会長を務めた人は哲也より三期下の者に譲った。彼は東京にある広告代理店の勤務である。会長の孫娘はN中に入ったが、高校はJだった。
「連盟のほうにはなかなか凝られませんね」
哲也は会員の一人からそう言われて苦笑した。気がつくと五十五歳、四捨五入すると六十台へとなっていた。還暦を過ぎてもやる人は多いが、やはり今の立場では剣の道にのめりこむわけにはいかなかった。
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