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2016年6月 3日 (金)

白い闇(22)

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m

 帰国する日になった。朝九時前にドミトリーの管理人に鍵を渡した。帰りは特に見送りをしてもらうこともなく、モノレールの駅まで行った。空港に着いたのは九時半、Lシティに飛ぶ飛行機の出発の一時間半前である。Lシティからのフライトも「国営航空」で今度は直行、午後三時に飛び立って午前十時に到着というダイヤである。

 ICカードは少し残っていたが、記念に取っておくことにした。また何年か後に来る機会があればいいという希望も込めてである。手荷物を預けて送迎デッキに上がってみた。十時に出発する便が去り、D国からの便が到着した。この折り返しで帰ることも可能だが、Lシティからにした。

 乗る予定の便が到着するとセキュリティゲートをくぐった。出国の手続きはLシティである。搭乗が始まったが、客は少なかった。私の席は左の窓側、前から五列目で、機内は窓側のみ埋まっているという状態である。天気はよく下界の様子が楽しめそうな気がした。離陸は北向きに行われることがわかった。

 戦闘機や対潜哨戒機が見えたと思ったら空中に浮かび上がった。鉄道線路と自動車専用道が遠ざかり、O市の町並みが広がった。機体が左に傾いてM港の駅や鉄道記念館も小さく見えた。左旋回しながらの上昇で、海岸線に沿った鉄道線路、O駅に城などが小さくなっていくのが感じられた。

 旋回が済んでモノレールや大学のあたりも何とかわかると思ったら雲に飛び込んだ。窓の外は真っ白な闇となり、機体が小刻みに揺れた。雲の上に出て上昇が終わると客室乗務員がコーヒーとサンドイッチを配り始めた。雲海はどこまでも続いた。再び窓の外が「白い闇」となり、雲の下に出ると鉄道線路をまたぎ、大型機が並んだL国際空港の滑走路に着地した。

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