下り坂(203)
前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m
とりあえず整備工場見学に同行することにした。六月に完成したばかりで、一機目の重整備が行われている最中である。ターミナルビルの反対側、徒歩で三分程度の距離だが、制限区域内ということでステーションワゴンの社用車で移動させた。747貨物機の鼻先が開いている姿を見せてからターミナルビルのすぐ下を通った。手荷物の作業場はここと言ってボーディングブリッジをくぐり、ターミナルの反対にある格納庫で降りた。
「時間のかかる整備のときに機体の化粧直しをやってます。これはイルカのイメージにしたもので、大学の広告」
垂直尾翼の部分は黄色に赤で会社のロゴを入れているが、胴体は淡いブルーでコックピットの窓のすぐ下に目と口が描かれていた。口の部分は赤である。客室の窓の上はN大学の名前とホームページアドレスが白で表された。
「今、エンジンは取り外されて中を点検しています」
翼の下にあるはずのエンジンは格納庫の後ろに置かれていた。カバーが取り外され、タービンの羽がむき出しである。
「前から吸い込んだ空気を圧縮して、この部分の内部で燃料と混ぜて燃やします。そして後ろから排気ガスとして噴出し、その勢いで進みます」
次に格納庫の隣にある部品保管庫にも案内した。ここにはタイヤからトイレのボールに至るまで約三万点の部品が置かれ、コンピュータで管理していると説明された。これらの部品はA空輸やJ航空とも共同で使用することが可能であり、他社にとっても保管場所を北九州にしてコストを削るメリットがあった。
「この北側にも敷地がありますが、今のところは予定に入っていません。市役所のほうではもっと航空に関係する会社を誘致したいと考えているようです」
MRJ運航は福岡が中心で、北九州には拠点がなかった。ニューヨークやロンドンまで二時間で飛べる極超音速機の開発拠点は宇部との競争に敗れた。
「じゃ、手荷物の作業のほうにしましょうか」
まずは到着機から下ろされるものをターミナルビルに運ぶ車に乗せる作業をさせた。飛行機の中には入らせず、コンベアで下りてくるものを積み替えるだけである。その中に防具袋と竹刀袋があった。
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