下り坂(186)
前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m
「ところでA380はもてあましでいるみたいだね」
平田の問いかけに哲也は「やっぱり大きすぎたかな」と応じた。羽田とホノルルを結ぶ路線に投入したものの、座席の埋まり具合はいまひとつ、昼間は羽田と那覇を飛ばしてみたりしていたが、とにかくお荷物となっているのが現状である。
「中東のエアラインにでも転売したらどうなの」
「それができたらねぇ・・・」
もう四発はいらないというのがA空輸の雰囲気になっていた。
「またハイパー・ソニックの構想もあるようだけど」
「ドリームじゃなくてナイトメアだよ」
東京とニューヨークやロンドンを今の六倍の速さで飛んで二時間で結ぶという夢物語を出してきたのはボーイングである。とはいえ、そんなスピードに人間がついていけるのかという不安も大きかった。
「俺もこのままMRJのお守りかなぁ。どうもySの二の舞になりつつあるような」
日本の二つのエアラインの他には、自衛隊・台湾空軍・フィリピン空軍・インド空軍に納入することが決まった程度である。技術的にはともかく、商業的には成功とはいえなかった。
「でもまぁ、ライバルが多い中で、この先どんな新型機を送り出していくかが大事かな」
「今より大きいのか小さいのか方向は決まっているの」
「大きくするほうだろうね」
「737の壁は厚いよぉ」
ランチのあとはそれぞれの職場に戻ることになった。哲也は小倉駅から空港行きのバスである。夕食もターミナルビルの食堂で済ませて小倉駅行きのバスに乗り込んだ。
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