下り坂(183)
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もう稽古は終わりに差し掛かっていた。元の側の哲也は「一分半の稽古で」と言った。段位はわからないが最低二段はあるだろうという見立てである。まず互いの合い面、竹刀同士がぶつかった。小手を狙われたのを小手・面で返してみたが当たりは不十分である。面に対しての返し胴を打ち、振り向きざまの合い面が打ち負けたかなと見て哲也は「参りました」と言った。
午後六時からN中のそばにある料亭での壮行会は辞退した。緊急事態も発生していないので、家へと向かった。最後に立ち会った人はやはり二段で八月に三段を受けてみるということだった。中学から始めた娘は中三で二段、三段挑戦は来年の夏である。
「最近の卒業生はR大学が多いみたいですが」
哲也は顧問に尋ねてみた。どういうわけか東京の私立大学は不人気になり、一番多いのは京都のR大学という状況が続いていた。
「剣道部ではいませんが、全体ではそうですね」
「九州に止まる割合も変わっていないようですね」
巷では海外の大学ということも言われたが、K高についていえば、まったく見られなかった。海外への語学留学というプログラムもなく、わずかにニューヨークまで行ってみるという研修が同窓会によって提供されている程度である。同期に一人、国連職員になった者がいるが、まだまだ国際的に活躍という人は少なかった。
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