下り坂(173)
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「S航空との分担について」ということで、定例の会議で資料が配られた。どうやら業界ではもはや隠し通せないというところになっていた。正式発表は年が明けてからということで、それまではどんな記事が出ても「当社から発表したものではない」という指示が出された。
A空輸に納入される予定の最初の機体は既に塗装が施されてアメリカでテスト飛行を行っていた。太平洋の横断に相当苦心したが、結局垂直尾翼内にタンクを増設して乗り切った。デビューは2017年の秋、まずは福岡と宮崎に入れるということである。一年程度、A空輸で運航するが、その先はS航空に機体・乗員・整備しをリースする形にするということだった。
また、737も二機、S航空に移管して、羽田と山口宇部を完全に任せるということも発表予定となった。これは三月のダイヤ改正からである。S航空はあくまで「新規エアライン」であり、A空輸が羽田路線を独占しているという批判をかわすための方策であることに変わりなかった。そして役員も全てA空輸からの「天下り」で、社外取締役は地元企業からというスタイルが確立していた。
「まっ、九州出身の人に行っていただくというところでしょうね」
持ち株会社のトップが集めた担当部長の面々を見回しながら覚悟を決めるように促していた。哲也ももしかしたら・・・という予感がしたが、表に出さないように気をつけた。
「まず、羽田から北九州・福岡・山口そして佐賀と737での運航を移します。さらに岩国と萩・石見も来年十月に。それで福岡も混雑空港というところからS航空へと徐々に移すこととなります」
「北九州が拠点のS航空に福岡との二重は体力的にどうでしょうか」
東京出身の総務担当部長が言った。
「整備は福岡の施設を貸すということで、それにM重工業も加わりますから。F航空のように静岡本社、小牧もベースというような感じになっていきます」
F航空はJ航空グループで既にかなりの路線の肩代わりをしていた。そして議題はA380に移った。
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