下り坂(177)
前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m
研究会の後、哲也はイタリアレストランに招かれた。アルコールは抜きで、パスタにピッツァ、ドルチェというコースである。
「A380を受け取ったら見学会とかお願いできますか」
「相談してみます」
「交通学会では去年、京都に鉄道博物館ができたときにオープン前特別見学を催したら希望続出でした」
「やるとなると羽田の整備場でとなりますが、定員は少ないと思います」
747が退役する前のお別れ見学では朝から晩は出催したが、そのくらいのことをしないといけないかなと哲也は思っていた。
「国内線で運行してから本格デビューと聞きましたが」
「新千歳、福岡、那覇ですね。一号機は十月の終わりか十一月、二号機が一月の初め、三号機が三月の初めという見込みです」
「ハワイ以外に飛ばすというのは」
「どうでしょうねぇ・・・」
哲也は言葉を濁した。やはり「お荷物」ではないかという声が社内からは上がっていた。これがA空輸の曲がり角になるかもしれないというペシミステックな見解もあった。
「S航空に関しては筆頭株主になっておりますが、今後も経営に深くコミットするんですかねぇ」
これも哲也はあいまいな返事をした。社長はA空輸から送り込まれ、取締役も営業以外はA空輸出身である。営業の取締役は旅行会社からの転身である。執行役員は今のところプロパーで固まっているが、会社の歴史がまだ十年ということで、他からの転職組みばかりだった。
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