下り坂(171)
前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m
最初は互いに面に出て、引き胴を放つという展開になった。審判の旗は止まったままである。試合時間は五分で三分を過ぎたあたりから両者の攻防は静かなものになった。中学の先生は高校までは別のスポーツで大学に入って剣道をやっていたそうである。段位は三段を取ったばかりだった。
延長になる寸前に教員のほうが面攻撃に出た。Kは首をすくめるようにして竹刀をかいくぐり、胴を切ってすれ違った。三人の審判はパラパラと旗を揚げた。二本目の号令と同時に時間がきた。
二十台の部では大学生、十代は高校生が制した。閉会式が済んで、道具を家に置くと夕食は「祝勝会&反省会」である。
「定年になったら、どうするの」
哲也はその問いに「九州へ帰るでしょうね」と答えた。リタイヤ世代の剣道復活は連盟が期待していたほどには増えなかった。
「そろそろ五段への朝鮮も始めたらどうですか。還暦すぎるとさらに厳しくなりますよ」
「土日の予定がなかなか・・・」
哲也は言葉を濁した。六月最初の土曜日にはK高校の同窓会関東支部の総会が待っていた。T放送に入った辻は報道部長になったが、不正会計問題を起こしたT電気に入った同期三人がどうなるかは不透明だった。S製鉄、H製作所、D銀行と様々な分野にいたが、それなりに揉まれていた。福岡のほうでは維新の党から占拠に出馬した者もいるが、落選した。市役所の者は課長、母校の教員になった者は学年主任を務めているそうである。
| 固定リンク
コメント