白い闇(9)
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指導教授が「次はM港に行きましょう」と言った時、貨物用の線路をOR方面からオレンジに白帯のでぃぜる機関車が石炭を積んだ貨物列車をひいてやって来た。黒い貨車には黄色の帯が入っていた。何両つないでいるか数えていたら旅客用の二本の線でを赤い四両の電車がすれ違った。「博士」が私に「あなたも好きなようですね」と声をかけた。
S駅は線路の両側にこじんまりした駅舎があって跨線橋でつながっていた。北のほうは造船所への通勤用である。ホームは旅客用の線路にはさまれた一本だけだった。M港は終着で改札は一箇所しかないため、一同は前寄りで待つことにした。貨物用の線路をH市側に向かう列車が来た。運転席の下だけ黄色で真っ赤な電気機関車と20フィートコンテナを三個ずつ積んだ貨車は10両、石炭が30両なのに比べて短かった。
私は「博士」にコンテナの「BNR」の「NR」は「国鉄」という意味かと聞いた。すると「現在は貨物会社のフレーとライナーのBFLで、NRとなっているのは軍関係」という返事が来た。軍の貨物には戦術核兵器も搭載できる短距離ミサイルもあり、H市の空軍基地所属の爆撃機や海軍の巡洋艦 コンテナから下ろして即発射も可能だと行って笑みを浮かべた。
M港行きの電車が到着した。四両編成なのは同じだが、運転席部分は白、側面は銀色でドアは真っ赤、窓の下に赤い帯が入っていた。「博士」は新しいタイプだと言った。ドアは二箇所で間には背もたれを動かして向きを買える二人がけのシートが通路を挟んで並んでいた。ドア際は固定されていた。この区画には40人が座れた。車両の両側はトイレの前は四人掛けの固定シート、運転席側は窓に背を向けて座るシートである。社内は座席が埋まっていたので、一行はドアのあたりに立った。私と「博士」は運転席のすぐ後ろに立って前方視界を見ることにした。
S駅を発車すると造船所に続いて製鉄所となった。厚板、薄板、レールという具合に並んでいるそうである。構内用の鉄道も見えた。速度計は120キロまで行ってしばらく走り、Y駅に滑り込んだ。ここはホーム二本で列車の追い越しが可能だが、ほとんど行われていないそうである。ここも製鉄所への通勤のために頭上に通路が設けられていた。左には製鉄所の事務棟や体育館が見えた。
Y駅を出ると左には二基の溶鉱炉が聳え立った。三十年くらい前まではさらに二基かあったが、撤去されたそうである。貨物線がさらに増えて、陸橋で見た石炭貨物列車が止まっていた。このあたりに製鉄所内と出入りする引き込み線があるということだった。白い円錐の山が二つ、これは石灰石で、溶鉱炉に入れて不純物を抜く役割だった。そして黒い無数の円錐形の山は石炭と鉄鉱石、石炭は国内だが、鉄鉱石は800キロ離れたN国の高山から船で運ばれているそうである。
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