白い闇(14)
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中央駅もホームが五本あって西側のループが発着する側には三階建ての赤レンガの駅舎である。ここから南に一キロにB国南岸のS港やK港に向かう路線が出ていたのをここまで遠心した。そのエリアにはB国立銀行を中心とした金融街となっていた。それが東側二本のホームを地下に移し、海峡トンネルでF国やV・D・G国に向かう国際列車が乗り入れる二本のホームとなった。いずれも両側に列車が着く形である。国際ホームは航空機と同様、パスポートと乗車券がないと入れなかった。熱戦反射ガラスで覆われて中を見ることもできなかった。
国際列車は300キロ運転をしていた。交流2万5000ボルトで両側を機関車がはさんだ十両編成である。国王の弟は大の飛行機嫌いで、国内はもちろん、外国の王室と交流するための行き来でもかつては海峡をフェリー、今はトンネルで越えた。トンネルは貨物列車とも共用していてスピードは140キロ、そして電気の系統が違うため、専用の線路を走った。
中央駅から王宮の前まで歩くことにした。幅が50mある道路は行きかう車が少なかった。ループの内側はバス・営業トラック・タクシー・公用車を除くと入場するための料金が必要で、支払い証明のステッカーをフロントガラスの内側に貼らないと監視カメラで摘発された。中央駅から向かって左側は、交通と郵便を管轄する運輸省、教育文化省、商務省、内務省、財務省が、右手には国防省、外務省、国立図書館が並んだ。どれも石造りで五階建ての重厚な建物である。
中央駅から一キロ歩くと左手に赤レンガで二階建ての首相官邸があった。その隣が王宮で、青い外観に白い窓枠はО城そっくりである。正面から右手にかけては、小学校から大学まで一貫した学校の敷地になっていた。大学は文系だけで、理工系や医学は別だった。国王には子供が二人いて兄妹という組み合わせである。皇太子は法学部を卒業して空軍に入り、首都防衛の地対空ミサイル部隊に中尉として勤務、王女は文学部在学中で、専攻は美術史である。
大学を見てから地下鉄で宿に向かうことにした。王宮前の駅は地下一階が改札、その下がホームである。出入り口は王宮前の広場の反対側のみにあった。電車は八両編成で赤い車体に白帯、ドアは一両に三箇所、電気はレールの横から取り入れるというタイプである。この路線はLシティを東西に貫いていて国際空港に直結した。ループとの接続駅を過ぎて一駅目から歩いて五分のところに宿はあった。ここの駅は王宮前に比べると少し深かった。宿の周囲も赤レンガや石造りの五階建てが並び、宿は赤レンガである。一階にB国の植民地だったGN国の大使館が入っていて、部屋は三階である。中はドミトリーと同じだった。夕食は道の向かい側にあるスーパーに行って瓶入り牛乳にライ麦パン、肉・野菜の缶詰類、そしてビールと菓子を調達した。
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