白い闇(19)
前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m
資料館を見る前に昼食をすることにした。資料館の隣にある食堂ではやはり魚フライにフライドポテトという定番のメニューである。窓から見える駅のホームでは乗ってきた列車が機関車を残して出て行った。別の機関車の推進運転側線に入ると機関車も移動して前に着いた。ホームの反対には真っ赤な電車が到着した。「博士」が電車は折り返しに便利だよねと言った。
資料館に入る前に蒸気機関車を見た。Lシティにあった貨物用と同型で黒い車体の正面と側面に黄色で「777」と入っていた。私は「縁起のいい番号」とコメントした。四つの動輪は赤く塗られていた。誰かが「人を轢いたときに血の色を目立たなく」と言った。運転室に入ることが出来たので運転席にも座ってみた。
資料館には坑内作業で使われたさまざまな道具が展示され、輸送手段のことも触れられていた。先ほどの機関車は1300トンを牽引したそうである。それはM港のものの倍だった。さらに大きな貨物用が1800トンだが、石炭用としては使われず、専ら世界大戦時にG国の潜水艦の脅威を避けるために船から陸上輸送にシフトという意味合いが強かった。
資料館の他には工科大学、市役所、炭鉱跡と回った。これらは駅から徒歩二十分以内に固まっていた。炭鉱に変わる産業となると結局は原子力発電所と海軍基地というのがこの町の現実だということが見にしみた。自動車道を利用してHまで一時間半のバスが一時間おきに出ているが、私たちは十七時半に出発するE行きの急行まで滞在することにした。
帰りの急行も四人がけの座席である。今度は進行方向の左側に陣取った。まだ残っている蒸気機関車に石炭や水を積み込む装置、向きを変えるターンテーブルが見えた。海軍の潜水艦基地を過ぎて一キロくらい走ると飛行場である。哨戒機が三機見え、滑走路を水色に塗られた小型ジェットが列車に平行する形で離陸滑走するところだった。それは「国営」航空とは別のエアラインで、Rを拠点にした格安航空である。Lシティとの路線は「国営」が渋々引き受けたが、R・BRを三角形に飛ぶという運航をしていた。離陸した飛行機はあっという間に雲の中に消えていった。
※ とりあえず ここまでといたします
| 固定リンク
コメント