白い闇(10)
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速度はやはり120キロまで来て加速を止めた。線路の右には五階建ての集合住宅が並び、左には三本の赤と白に塗られた高い煙突が現れた。それは石炭火力発電所で70万kwの新型三基に変えられたばかりと「博士」が解説した。またブレーキがかかってT駅に止まった。ここもホームが一本で両側に線路がある構造になっていた。
駅の北には溶鉱炉が二基あるが、これらは操業をやめていた。貨物用の線路を青に黄色い帯のディーゼル機関車が貨車を10両牽引して追い抜いていった。積荷はレールである。電車は再び加速を始めた。加速中に左側に保存されている溶鉱炉があった。送風用の装置は白の塗料で目立つようになっていて周りには樹木が植えられていた。ここで電車は先ほどのレール運搬の貨物列車を追い抜きにかかった。
線路の右にはO工科大学のキャンパス、そして左にはガスタンクが現れた。ここにも赤と白の煙突が三本あり、70万kwの天然ガス用が三基並んでいた。右手が鉄道車両工場、左が海軍の基地、さらに右がO城となると川を渡ってO駅到着である。ホームは三本あり、右の駅舎とつながったのが一番線で、一番左の五番線に止まった。また貨物列車が追い抜いて行った。
乗客の大半が下車して一同はシートに腰を下ろした。私と「博士」は運転席後ろの窓に背を向けるシートに座った。後を追いかけてくるT始発E行きの急行からの乗り継ぎを待って発車というアナウンスがあった。EはLシティまで向かう路線上にあり、Oからは192キロである。貨物の線路をOR方向に向けて列車が通った。青に黄帯のディーゼル機関車が10両の赤茶色の貨車を引いていて積荷は石灰石である。
O駅を出ると四・五番の互いに入れ替えるポイントを過ぎ、四番のほうは右にカーブ、私たちはスロープを上がった。貨物の線路をまたぎ、右手から来る線路一本もまたぐと、二・三番線に通じる反対側の線路が近づいた。三本の線路の左には四車線の道路、そして海岸線、右手から来る自動車道が上をまたいで左の道路に合流すると小さな駅に着いた。ここもホーム一つで両方に線路、駅は陸側である。
左の線路が道路を踏み切りで超えて埋立地に入った。そこは昔石炭の積み出し港だったが、今はコンテナ埠頭に変わった。フィーダー程度のこじんまりした施設で、貨車20両からおろしたコンテナが三段積みで置かれていた。それから海洋警察の施設になり、石油タンクとタンク貨車も目に入った。右手は車両基地となり、電車はゆっくりと終点のM港の一本しかないホームの右側に止まった。
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