白い闇(2)
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Lシティ国際空港は二本の4000m滑走路がターミナルをはさみ、さらに横風用の3500㍍があった。横長のターミナルビルがそれぞれの滑走路に面して二つあり、真ん中が駐車場というつくりである。ボーリングブリッジをでビルに入った私は動く歩道を歩いた。機内持ち込みできる鞄には当座の衣料品や辞書などを入れ、貴重品は身につけた。
エスカレーターで一階に下りてバゲージクレームでスーツケースを受け取ると入国審査場に進んだ。若手の係官にパスポート、入国カード、О大学の「留学許可証」を示すと係官は「一年ですね」と尋ねてきた。「一年です」と答えるとパスポートの出国スタンプの真横に入国スタンプが押された。
到着ロビーに出ると目の前に地下鉄へ下りる階段があった。空港からLシティの中心までは真東に25キロで地下鉄一本だった。もうひとつ「国鉄」の電車の大環状線がターミナルの下に乗り入れていた。これを利用するとLシティの南東11キロにある国内専用の空港まで乗り換えなしのアクセスである。
LシティとO市は約700キロ離れていた。かつては国内専用の空港からB「国営」航空が飛んでいたが、国際空港のほうに移されて朝七時から夜十時まで一時間ごとにシャトル便が飛んだ。鉄道でのアクセスも可能だが、それは落ち着いたら首都を見に来ることとして国内カウンターのほうに足を勧めた。
乗り継ぎ便は余裕を見て朝九時十五分発を予約していた。B「国営」航空の機体は胴体、垂直尾翼、エンジンカバーが真っ赤に塗られており、窓の上にレタリングとホームページアドレスが入っていた。垂直尾翼にはこの国の象徴である王室の家紋が入っていた。国内用はエンジン二つの小型ジェットである。
機内に入ると一番前は通路一本を二人がけのゆったりしたシートが挟み定員八人、その後ろは三人がけが挟む形で定員百五十人だった。私の席は左翼付け根の窓側である。機内はビジネス客で満席だった。私の隣は若いスーツ姿の「勤め人」二人が並んだ。定刻どおりにスポットを離れたが、離陸では七機待たされた。
雲の切れ間すら出てくるほど視界はよくなったが、首都の中心を右に見て離陸するので、田園風景しか見えなかった。首都から北西に向かう鉄道線路と自動車専用道路が目に入ったと思ったらやはり雲の中に飛び込んだ。白い闇の中を上昇し、十数秒で雲の上に出た。
機内サービスでクッキーとドリンクが出た。ドリンクはコーヒーを選んだ。高度が下がると雲に飛行機の陰が移り、後光のように円形の虹が包んだ。着陸のアナウンスがあり、再び雲の中に突っ込んだ。雲の下に出ると海面すれすれに飛んでいた。緑色の海岸線と沿うように飛んだかと思うと空港の敷地に差し掛かり、滑走路に着地した。
※ 「国鉄」「国営」とあるのは株式会社形式であるものの、政府が株式を100% 保有しているためである。
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