白い闇(5)
前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m
到着した翌日に市役所で「外国人登録」をすることになった。私とZ国からの他、三人が職員二人と朝九時半にモノレールに乗った。市役所はO駅から一駅、大学からは四駅目である。大学の隣の駅まで真西に進んだモノレールは北に向きを変えた。幅50mほどの川の左岸に沿いかけるとまた駅があってそこを出ると自動車専用道をまたいだ。
三つ目の駅の西には工場が広がっていた。ここは陶磁器工場で便器と食器という何ともいえない製品の組み合わせである。ファクトリーショップがあって、モノレールの駅を降りてすぐだった。ここを出るとトラムが東西に走る通りをまたぎ、「市庁舎」という駅に着いた。五階建の重厚な石造りの庁舎は東西50m、南北150mである。
市庁舎駅は改札が地上になっていた。赤レンガが敷き詰められた広場や歩道があり、川沿いにはベンチが並んでいた。一階にある「住民登録」窓口で書類と顔写真を提出すると一時間程度待つように言われた。私たちはロビーにある「О市の歴史地理・特産物」のコーナーに大学職員から案内された。
О市の始まりは市庁舎の北にある高さ10mばかりの岩山に作られた砦だった。やがて砦の南に集落、すぐ東を流れる川の向こうに商売人の街、その北側に港ができ、石炭が市の南西部で取れるようになると製鉄・石炭運搬のための鉄道と車両工場・造船・綿織物工場・陶磁器工場・平気工場という具合に様々な工場が作られた。紡績は廃れたが、その代わりにエレクトロニクスが誘致された。
特産物としては、リンゴを加工したジャム・飲み物、鉄鋼ではレール・船舶や自動車用の鉄板・電線・パイプ、造船は模型で4万tクラスの戦艦と客船、B国が持つ3隻の原子力空母の1つが展示された。陶磁器の工場の製品は食器だけである。エレクトロニクスの関係ではノートというよりラップトップ式の小型パソコンとプリンタ、そして驚いたのは兵器工場で作られた拳銃と自動小銃であ。職員は「もつと火力の強いものもありますよ」と笑みを浮かべて言った。
鉄道工場で作られ歴代車両の模型もあった。こうした模型もО市の特産品の1つである。海べりに石炭を運んでいた時代の小さな蒸気機関車に始まってLシティとの間を結んだ急行〔特別急行〕を牽引した歴代の機関車と客車、動力革命によって主役から取って代わったディーゼル機関車、電気機関車、電気は交流の2万5000Vである。ディーゼルカーに電車、そしてモノレール。
写真が貼られた「外国人登録証」を受け取ると五階東側にある食堂で昼食をした。眼下にはモノレールと川、対岸には赤レンガや石造りの百貨店、ホテル、様々な企業のО支社の入る建物が並んでいた。モノレールは川を渡ってО駅へと進むが、そこから市庁舎までは1000mそこそこである。
| 固定リンク
コメント