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2015年11月11日 (水)

下り坂(166)

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)

 両国駅に着いた千葉行きの普通電車を降りた哲也はキャリーに載せた防具袋を引きずりながら改札に向かった。十一月最初の土曜日、中田の長男が通うN大付属中・高の稽古に参加させてもらうことになった。付属中時代には行く機会がなかったが、一年前に高校へ進んでまもなく訪ねた。それから一年半ぶりの訪問である。

 国技館の横を抜けて二つ並んだ赤レンガの六階建ての校舎までは徒歩五分ほどだった。中学は一学年百五十人、高校は二百人でそうである。体育の授業に剣道を取り入れていて剣道部も中高合わせて100人という大所帯だった。道場は西側の校舎の一番上だった。東側は普通の体育館である。

 哲也が到着したのは午後一時前、情報によると中学は通常通りだが、高校は模擬試験のため後川ということだった。中学三年生は高校に自動的に上がるため、クラブに参加した。高校の進路は七割がn大学だが、難関大学を目指す者も多く、インターハイ予選が終わると三年生は引退した。

 六階まで上がるとそれだけで足がふらつきそうになった。顧問と卒業生のN大生二人に挨拶して更衣室に入った。顧問は30代半ばで六段、大学生二人は剣道部ではなく、剣道サークルで、半月後に四段挑戦を控えていた。中学生が基本の稽古をしている間に剣道形のチェックをすることになった。

 試合場三つ分のスペースに中学生は七十人、準備体操に素振りをすると面をかぶって切り返しからのメニューが始まった。哲也は大学生二人の形を見ながらどんなメニューかもチェックした。切り返しの次は正面うち、四本ずつで交代、それからこて・面、小手・銅と続いた。

 鍔競り合いからの引き技、面に対する技、小手に対する技の終わるところで二人の形のチェックは終わった。手順を覚えているだけだが、実技さえクリアしたら大丈夫だろうと哲也は思った。中学生のほうは元にかかる列を作った。哲也は大学生二人より上のところで面をかぶった。一番上はもちろん顧問である。

 最初は三年生の一番上に座っていた者だった。哲也は最初の面攻撃に対して胴を抜いた。振り向きざまの面攻撃を受け止めると引き胴を浴びた。足は重く、応じる技ばかりになっていた。三分ほどで次の者に交代した。大学生二人の横のエリアでは中学生同士で二十組が試合稽古をしていた。

 今年はじめたばかりと見られる一年生には最初の面攻撃は受け止めた。それからどうするかを見ているとだいたい引き胴に来た。面のスピードがまだないので胴を抜くことはしないで受け止めて返すほうになった。時計の針が午後三時を回ったところで中学の部は終わり、希望者のみ高校の部に加わった。

 

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