下り坂(164)
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受付でパンフレットをもらうとl字型となっている校舎の角から入った。地下一階にある靴置き場から中庭を通るルートは一年生の時に使ったが、そこは新しい校舎の工事現場になっていた。新校舎は南棟と北棟の二つあり、先に完成した南棟でも一部の展示が行われた。哲也は一階の廊下を真っ直ぐ進み、南棟に足を運んだ。
初めて入った新校舎は在校時はテニスコートと体育館の跡である。トイレを覗くと「個室」は全て洋式になっていた。二階に上がってまず「海外研修」「東京研修」「東日本大震災被災地への修学旅行を見た。研修というのに哲也はうらやましく思った。海外の行き先はニューヨークで、国連に勤める卒業生に面会したそうである。
考古学部の展示に哲也は驚いた。土器や古墳というイメージと違い、日本の蒸気機関車の歴史だったからである。展示室に待機している女子部員に理由を尋ねてみようと思ったが、断念した。産業考古学という分野があるなと思いながら哲也は初めてのアングルからまだ残っている図書館と野球場に視線を走らせた。
写真部の展示で二十枚の作品から一番よいと思ったものの投票をして古い校舎に戻った。哲也は携帯のカメラで階段・廊下・教室・外の景色を撮影した。展示の内容よりもこちらを見るほうが主眼になっていた。クラス毎の発表では最優秀の投票をしているため、呼び込みも受けた。
迷路・占いはやってみたものの、自転車を使った「原始力発電」は遠慮した。バーゲンセールの会場は三年の時の教室だったが、これも在学時は理科の実験室で規模は半分以下である。三階の美術室では過去の授業の作品も出された。哲也が描いた「幼女剣士」はさすがになかった。
美術室の上にある天体ドームでのプラネタリウムも見た。校舎を一通り見ると大食堂となった体育館を覗いて一年生のクラス発表であるモザイク壁画を見て回った。一番印象に残ったのはロンドンのタワーブリッジである。体育館を出ると保護者会のやっている100円ドリンクでお茶を買った。
哲也はグランド脇に立って今の校舎と新校舎を見比べた。完成した南棟は4階建てで白と青紫の二色に塗られていた。北棟が出来ると見られなくなる校舎、正月の稽古初めのときはどうなっているのかと哲也は思った。今の職場では正月を普通に休めるので例年通りの予定のつもりである。
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