下り坂(160)
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晩秋の風が東京に吹き渡っていた。街路樹は色づき、もうすぐ冬だなと思いながら哲也は地下鉄の出口から体育館へと向かった。防具をかついで歩くのは何とも疲れると思いながら今日の試合はどういう展開になるのかとわくわくしていた。
実業団は若い選手で編成されたチームだったが、国土交通大臣杯のほうは時々選手の都合がつかないということでスタンバイを頼まれた。今年は副将まで三十代で大将に哲也が入ることになった。
十月に行われた区大会で哲也は三十歳以上の部で準優勝だった。最後の相手は三十歳になったばかりの会社員で、高校を卒業してしばらく休んでいたということで段は二段だった。哲也の得意な返し胴が間に合わずに面ありとなった。
十一月三日の全日本では福岡県代表の大学生選手が優勝した。やっぱりバネのある若い者でないと試合剣道は厳しいなというのが哲也の感想である。彼の下にも有力な学生がいて一人が哲也と同じ中学だった。
チームの編成と相手は哲也を剣道部に誘った人からメールで知らされていた。その人は同じフロアで人材開発を担当していた。選手としてではなく、審判としてこの大会に参加するそうである。
先鋒は今年入社したばかりの者だった。K大学出身で所属は旅客営業本部である。小学校からずっとやっていて大学二年のときに四段を取っていた。次鋒が哲也と長く付き合いのあるMだった。
彼が三十歳を前にして結婚を控えているというのもメールで知った。ずっと羽田の整備場勤務で777を担当しているそうである。政府専用機が747から777になりA空輸が整備を受託することになって責任がさらに重くなるなと思った。
中堅は三十四歳、副将は三十七歳で、中堅は子会社の商事、副将は787の副操縦士である。二人とも子供が剣道を始めたのをきっかけに再開した。中堅は三段、副将は二段だった。
相手は関西のK鉄道だった。どんなメンバーなのかわからないが、開会式の前に見たパンフでは三十六歳で五段ということが分かった。あまりガチャガチャした試合運びにはならないかなと哲也は思った。前の四人は全員二十台で中堅が三段、その他は四段である。
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