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2014年10月31日 (金)

Our generation(36)

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m

 立ち上がりにヒロは剣先を沈めて間を詰めた相手が面に出てきたら胴を抜くつもりである。中学時代の彼はよく面・右小手・右胴をガードする避け方をする癖があったが、それは直っていなかった。空いた左側の胴に切りつけてみたが、審判の旗が上がるかどうかは微妙だった。左腰には武士なら刀が差してあって鞘ごと切る勢いが必要だから有効にはなりにくいというところである。実際、ヒロが逆胴で一本を取ったことは公式戦ではなかったし、練習試合でも二回だけである。

 何か待っているような感じだなと思ったヒロは次に小手を見せて反応を探った。小手を抜いての面と振りかぶろうとしたので胴に変化した。これでワインカラーの胴の左右両方を打てたなと思ったヒロは面勝負を仕掛けようと思った。中学時代の彼の技量では出鼻の小手や返し胴は無理だろうという判断である。

 剣先が触れ合ったところが足の指を尺取虫のようにして少し前に詰め、一気に面を狙った。足を踏み出した瞬間、ヒロは右わき腹から左腰にかけて衝撃が走るのを感じた。そのまま虚空を打ってしまったとき、彼が相当腕を上げていたことに気がついた。

「俺の胴を抜くとは、お主、凄腕じゃのう。でも東大に合格するよりずっと簡単化」

 終わってからヒロは声をかけた。礼をするとき中学を卒業した者は先生と同じ側に並んだ。ヒロと彼の間に入る者はなかった。

「武道の授業では、中学で全国制覇した人とやってますから」

 空港の近くにある私立にも中学で優勝した者が入って、W大学に進んだ。前の年に個人優勝したのは熊本県の者でQ学院ではなく、O高校に来た。

「ふうん、やっててどうだった」

「こっちから打って行くと全く駄目です。でも・・・面抜き胴は何回か取って自信つきました」

「だろうな。さっきの抜き胴は記憶に強烈に残りそうな奴だった」

 彼は苦笑いした。七段の先生が面を着け始めたので、ヒロは下座に移って再び面タオルを頭に巻き始めた。中学生も何人か居残り稽古である。

 

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