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2014年9月22日 (月)

もう少し・・・時が(2)

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m

「アナログコックピットの飛行機が減っていくからパイロットとして生きていくにはダッシュ400とか777のデジタルコックピットに取り組むしかないわけです」

「事務系も同じですな」

 窓の下ではJRの電車が行き交っていた。画面から目を離すと「のぞみ」が発車するところである。最高時速270キロ、かつて、広島は飛行機が新幹線より優位にあったが、「のぞみ」は時間差を小さくしてしまった。その上、新しい空港は広島市から50キロも離れた山の中に作られたため、ビジネス客が新幹線に移った。J航空や同業他社は対抗策として回数券の割引率を15%から22%に上げた。東京~広島の他、東京~大阪・岡山・山口宇部・山形、名古屋~福岡、大阪~福岡など新幹線と競合する路線ではこうした回数券が売り出された。

「OA研修とかありましたか」

「来週管理者向けにあるそうです」

 本社ビルが天王洲に移るまで残すところ一ヶ月だった。隆が住む青物横丁からは徒歩10分で通勤できた。

 昼休みになった。ビルには食堂がないので、他のビルやJRの高架下、歩道の弁当スタンドなどを利用したが、今日は八重洲地下街へ足を伸ばした。こちらにはライバルのA空輸やD航空の支店があり、タイムテーブルを入手して新しい割引運賃が導入されているかどうか調べた。

 六月に運賃制度が新しくなって通常期・ピーク期・閑散期で運賃が変動した。従来は七日以内に往復すれば10%オフという割引券があったが、これは廃止になった。二十八日以前に購入したら30%オフ、十四日以前なら20%オフという事前購入割引は他社も横並びであるが、A空輸は二十八日以前で二泊以上十四泊以下の往復を予約すると40%オフという割引券を打っていた。また、D航空は午後九時半以降に到着するビンに15%オフ、東京~札幌・大阪・福岡、札幌~女満別・釧路、福岡~宮崎・鹿児島などに限った10%オフの日帰りきっぷ、二ヶ月前の売り出し日に購入すると45%オフの券、青少年向けの割引きっぷのスカイメイトの割引率を下げる代わりに予約ができるようにしたものなどを独自に設定した。

 これらの券は購入できる数が限られていた。全ての座席を安売りすると収益が悪くなるからである。割引券を期待して支店や代理店のカウンターを訪れる客の苦情が絶えず、タイムテーブルや広告に記載する文字をもう少し目立たせたらどうかとも言われていた。

 午後は八月のタイムテーブルの校正である。作業は電話などで注意力が散漫にならないよう、応接室にこもって行った。

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