もう少し・・・時が(4)
前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m
「家の格なんて考え古いなぁ」
「俺が言いたいのは貧困を知らない人だと後々苦労するんじゃないかと言うこと」
このまま定年までJ航空に勤められるとは思っていなかった。隆が小学生の頃にアメリカでは航空会社に対する規制が取り払われ、安売り航空会社の登場で「喉を掻き切り合う」競争が展開された。こうした中で一定の距離に乗ると無料航空券がもらえるFFP制度ができたが、これは日本でも採用するようになった。数年たってU航空、A航空、D航空などがメジャーとして生き残ったが、日本になじみのあったP航空は消滅した。J航空もP航空に似て国際線中心だったこともあり、国内線の足固めを急いだ。会社消滅とならなくても給与切り下げや人員削減は避けられない問題である。
「俺の家内は子育て一段落したらまた銀行でパートしようかと言っているよ」
「その銀行が生きていたらね」
彼の妻が勤めていた信託銀行は外国の格付け会社によると経営が危ないとされていた。
「きついこと言うなぁ」
「まっ、健康であれば顔がどうとか気にしないね。剣道の稽古に行っているところに高校一年の女の子二人組みがいるけど、どっちも優劣つけがたいな」
「こらこら」
隆たちは中華料理の店に入った。夕食は外食かコンビニもしくはスーパーの惣菜である。朝食はパンと牛乳というパターンだった。
「奥さんいなくなって食事はどうしてる」
「やっぱり外食になってしまう。コンビニだとどうしても割高だな。弊店間際のスーパーに駆け込めたら一番安上がりだけど。そんな時間に帰ることはまず無理」
隆たちは野菜の多い八宝菜定食とビールを頼んだ。
「前は奥さんが買い物してくれたんだろ」
「まあそうだな。一人で暮らすのは大変」
隆は就職して初めて親元を離れた。坂本は中学・高校で寮生活を経験していたが、それ以外は八王子にある実家で過ごした。
「直に慣れるよ。ところで、出産予定日はいつ」
「来週」
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