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2014年6月10日 (火)

明日君は陽だまりの中で(6)

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m

 英樹の試合が始まった。蹲踞から立ち上がると声を張り上げるのは抑えて半時計回りに旋回した。それは相手の面金の中に光が入るようになるという判断からである。相手は少し背が高く、学年は上だが剣道歴は自分と同じくらいと感じた。

 最初は思い切って面を狙った。相手が首をすくめて体をかわし、英樹のへその上あたりを切ったが、鍔元に近い部分だったのが幸いした。危ないなと思って次の攻撃は小手・面で仕掛けた。離れ際に相手の右胴を叩いたが、審判の反応はなかった。

 相手は引き分け狙いと見た英樹は返し技に警戒しながら勝負をかける瞬間を待った。小手・面を見せておいて、小手・胴、それは永井の得意な技である。英樹は大将として座っている彼からそのようなテレパシーを感じた。

 時計回りに攻めて、英樹は小手・面と見せて胴に変化した。相手の手元が上がり、わずかに見えた黒い胴に竹刀が当たった。腹をしっかり切ったという感触があり、すれ違うと反撃に備えて振り向いた。審判は三人とも旗を上げていた。

 一本勝ちで中堅につないだものの、中堅戦は相手に引き面、取り返そうとして出小手を浴びてしまった。副将は互いに有効打がないまま大将戦である。一勝二敗一引き分け、本数はこちら一本、向こう三本は厳しかった。永井が二本取って勝つしか道はなかった。

 相手は余裕なのか時折打ってきたりしていた。面の相打ちが数回あり、力は互角というところである。永井が剣先を沈めて間を詰めた。相手が守りに入ったとたん、永井は甘くなった左わき腹に鋭く切り込んだ。

 快音が天井にこだまして英樹たちは拍手した。審判が「二本目」と言った瞬間、時間切れでT工業の勝ちが決まった。「これが精一杯だったなぁ」と面を外した永井が残念そうな顔で呟いた。

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