下り坂(158)
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小学生以下と中学生以上を分けて稽古するのがここのやり方だった。いつの間にか初段の受験資格が十三歳以上となり、小学校の六年生で一級を受けることも可能になった。もちろん始めた時期によっても受けられる条件が変わったが、中学一年七人のうち三人が初段、中学二年六人のうち二人が二段、一人初段という具合に審査が目前に迫っていた。
哲也は中学生以上のところの端に固定して基本に加わった。これなら全員と当たることが可能だった。稽古は中一は三人、中二が四人で中三はいなかった。運動会を翌日に控えて大変な状態だが、審査を控えた者は全員そろった。
切り返し、正面打ち、小手・面、小手・面体当たり引き胴、出小手、面抜き胴とメニューをやって試合稽古である。背が高いが胴は細い者、中くらいの背丈でワイドボディの者、背が低くが胴が太い者、哲也は相手が面に来るところの胴を抜くのにこだわったが、それは待つのではなく、相手を引き出すことが肝要だった。
そして自分からももちろん面技を出した。それに対して小手を打たれたり、胴に返されたり、誰がどのような技を身に着けたかをチェックしていた。
七人全員とやり終えて終わりの礼となった。そのあとは剣道形である。哲也は後から来た一般の人を相手に試合稽古の継続である。区民大会が近づいて、出場予定の何人かが来た。みんな少年剣士の保護者で初段から四段までさまざまである。四段は大学までの経験者で子供が始めたときは三段だったが、三度目の正直で合格した。
五段を目指す剣道で相手は固くなっていた。哲也は剣先を前後左右にかき回し、小手から面に飛ぶ意識を見せた。相手が面に飛び出した瞬間、哲也の竹刀は右わき腹を捉えて鈍い音を立てた。そのまま腹を真っ二つに切り裂く気持ちで竹刀を前方に押し出したが、自分の足がほとんど動いていないことに愕然となった。
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