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2014年6月18日 (水)

明日君は陽だまりの中で(32)

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m

 朝が早かったのでトイレはマダだった。剣道着だけにして「個室」に入り、出たところで平田に出くわした。「ヒデ、頑張れよ」と声をかけて彼は別の「個室」に入った。五つ並んだ個室は出入りがひっきりなしの状態である。みんな排便のリズムがいつもと違うのかなと英樹は思った。

 試合前の整列で、向こうは茶色の胴で揃えているのが分かった。英樹はゴックンと唾を飲み込んだ。相手もそうなのかなと思ったが、振り払って試合場の中央に進み出た。岡部も英樹をじっと見つめながら三歩進み抜刀から蹲踞に移った。立ち上がると英樹は声を張り上げ、時計周りに旋回した。

 先に英樹が面に飛び込んだ。受け止めた岡部の左脇腹が甘いと見て引き逆胴を放った。ヒットしたものの、審判の反応はなかった。岡部がグッと迫ってきて面に来たので次は胴を抜いた。物凄く大きな音が耳に飛び込んだものの、不十分という判定のようだった。小手・面を見せて小手・胴に変化したのはブロックされた。

 時間半ばで岡部の面に小手を合わせたが、間合いが近すぎるのか一本にはならなかった。一足一刀の間にして互いに出方の探りあいが始まった。英樹は岡部が面に来る気配を感じた。出鼻面と飛び出した瞬間、相手の姿が消えて右脇腹にバコンと衝撃を感じた。サッと輪切りにされた感触を覚え、「胴あり」の宣告が耳に飛び込んだ。

 何とか取り返そうと岡部の竹刀を払ったり、抑えてみたが、崩せなかった。胴を抜かれて気持ちが消極的になるのだけは避けようとしたが、とうとう時間が切れた。続く二人の先輩に対して岡部は面体当たりからの引き胴を一本ずつ決めた。二人の先輩は面抜き胴で対抗したが、一本にすることは出来なかった。

 副将の福原は小手を狙って抜き面を食らい、岡部の気攻めに左脇が甘くなったところを逆胴に切られた。岡部が逆胴を打つのは極めて珍しいが、審判が一斉に旗を挙げるほど鋭い打ちだった。「逆胴を一本にするには刀の鞘ごと切る気持ちが大事」と顧問の先生は言っていた。

 松井が進み出た。とにかく相手を止めること。最悪でも引き分けに持ち込んで、五人抜きを阻止するというのがチーム全員の共通した思いだった。松井は高校の総決算のつもりだったのかまず面勝負に出た。それに対して岡部は出小手を決めた。

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