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2014年6月19日 (木)

明日君は陽だまりの中で(41)

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m

 個人戦で英樹の最初の相手は山田だった。三度目の対決、とにかく負けないと自分に言い聞かせた。それは向こうも同じはずである。T川高校に入ったN中の者が三本線の入った帽子を団扇のようにしているのが目に入った。こちらの一年生も紺色の制帽でのど元を扇いでいた。

 立ち上がると互いに面を狙って竹刀同士のぶつかる音がした。間を置いて山田が小手を狙ってきたのをしのいだ。英樹は面に行くぞという素振りをして春休みに永井から伝授された奇策を試してみた。それは竹刀を左肩にかつぐ見せ太刀である。山田が反応して英樹の面を狙ってきた。英樹は左にかついだ竹刀を斜めに切り下げて緑色の胴と金色の校章を切った。振り向くと山田の上体は虚空を泳いでいた。

 先行はしたものの、山田の反撃は激しかった。面を受け止めた次の瞬間、英樹の右わき腹に鋭い衝撃がきた。それから臍まで切り裂かれたような感触があり、勢いよく離れた山田がこちらの喉に剣先を向けるのが目に入った。真剣なら腸がドバッと噴き出すんだろうなと英樹は思った。

「延長」と審判の号令がした。また面に来た山田の胴に返した。破裂するような音が耳に飛び込んだものの審判の反応はなしである。振り向いた山田はじりじりと間を詰めて来た。小手に来る気配がして返し面で応じようとした途端、左わき腹に一撃があってこれも臍まで切り裂かれる感触を覚えた。追いかける暇もなく、審判から「胴あり」の宣告が来た。

「腹をVの字に切られちゃったねぇ」

 面を外した英樹に高岡が背中の標識を外しながら言った。

「やっぱり傷が新しく入ってしまっているかな」

 英樹がそう言うと一年生が鏡のような表面に顔を寄せた。

「左側に1つあるのは今の戦いのあとでしょうね」

「団体では増やさないようにしないといけないなぁ」

 藤崎が両手を首の後ろにあてた。彼の着けた胴も右側に数条の筋があった。それでも左側にはマダなかった。

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