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2014年6月16日 (月)

明日君は陽だまりの中で(20)

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m

 次の相手のT川高校は旧制中学からの伝統校である。中学の同期も一人ここに入った。男子は緑色、女子はワインレッドの胴に金色の校章を入れていた。ここの制服は黒に五つボタン、制帽には三本の白線が入っていた。

 先鋒の山田は同じ一年である。中学時代には田川市民の大会で優勝したこともあると聞いた。一回戦のT農林との試合を観察していたら出小手を二本決めていた。背丈は英樹よりも少し低く軽やかな動きと感じた。 

 英樹は立ち上がり、少しずつ間合いを詰めた。山田が時計周りにかわすので、竹刀を打ち落として面に飛び、不十分だったので右胴に打ち込んで離れた。剣道を始めて最初に試合で奪ったのはこの引き胴だが、審判の旗はひとつだけで、無効という旗を振る感じが伝わってきた。

 山田が面に飛んできたので英樹は剣先でCの字を描くようにして胴を切った。相手の勢いがよくて、右わき腹ではなく、校章が描かれた正面を真横に切った。物凄い音はしたものの、審判は誰も旗を上げなかった。

 一足一刀のちょうどいい間合いで英樹と山田は互いの目を見ていつ仕掛けるかさぐっていた。山田の上半身から英樹に向かって目に見えない波が押し寄せた。ここは出鼻だと秀樹は面に飛んだ。左こぶしを山田の喉に叩き込むように動かした瞬間、英樹は右わき腹に衝撃を感じた。右足を踏み出して行くのと同時に自分の腹が山田の竹刀で切られていくのがはっきりわかった。英樹はすれ違った山田のほうを見た。真剣ならば胴を輪切りにされて首は後ろを向いても臍から下はそのまま前へというはずである。勢いよくすり抜けた山田はサッと旋回してこちらに剣先を向けた。

 試合はこの胴一本で決まった。後ろの四人必死で取り戻そうとしたが、四人とも引き分け、しかも有効打はお互いになしというところである。それは相手チームと力が拮抗しているという証左であったが、非常に悔しい結果である。

「相手に引き出されてしまったな。でも思い切って攻撃した結果だから」と試合を見ていた松井の父が英樹に言った。

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