何となく 何とでも〔18〕
前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m
研究室を出て自宅に向かったのは午後八時である。賃貸マンションの一階がスーパーになっていて、半額のシールが貼られた「から揚げ弁当」に食パン・牛乳・ポテトサラダを購入した。自室のドアを開けるとやはり建材の匂いが鼻を突いた。
万一の地震に備えて飲料用に二リットルのペットボトルの水を一ダース用意していた。期限が迫ると少しずつ飲んで、空になったものには非常用の水をストックした。それが春休み中であったが、震度六の揺れに見舞われた教訓だった。
一夜明けるとイギリス経済論の講義である。シラバスでは産業革命からサッチャーによる民営化までとしていた。炭鉱の話は九州にも通じるものがあった。ロンドンだけでなく、マンチェスターとリバプール、カーディフ、ヨークやグラスゴーにも足を運ばないと行けないなと思った。この夏は見送るが、その次の年には実行しようと決めた。
昼食は学外で食べようと思った。海岸線のほうに歩くとトンカツのチェーン店があるということで初夏の日差しを浴びながら北に向かった。福岡タワーにドーム、芸術品を気取った建物が並んでいるのを見ながら歩いていると学生委員会の職員二人も同じ方向に向かっていた。やはりトンカツの店ということで同じ席に腰を下ろした。
「おや、ゴマをするの上手ですねぇ」
日替わり定職を注文するとゴマのすりこぎが運ばれた。私は「一応サラリーマンですから」と応じた。ロースかつに千切りキャベツ、ご飯は白か麦、味噌汁は赤か白という具合に細かく注文するシステムである。
「このあたりは面白い建物が多いでしょ」
「そうですねぇ。個性的と言いますか」
職員は一人が西区の今宿、もう一人は東区の和白に住んでいた。どちらも電車利用であるが、東京に比べると遥かに楽な通勤である。
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