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2014年1月29日 (水)

Our generation〔13〕

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m

 十一月に入ってすぐに大学祭が行われた。伊都では十一月の後半である。伊都は理系が幅を利かせていて小中学生に「科学の楽しさ」をアピールする場となっていた。ヒロは太陽電池飛行機の実験を見たが、大学祭の前は天気が悪い日が多く、電池に十分溜め込むことができなくてプロペラの回りが鈍かった。崖のようになった場所で無理やり地面から離したらそのまま斜面を転げ落ちて行った。

「再生可能エネルギーへの過度な期待は禁物だな」

 見ていた中からそんな声が上がった。その後、伊都キャンパスには風力発電機が並び、水素エネルギーの実験に力が入れられていた。

 ヒロのゼミでは模擬裁判として「介護殺人 なぜ夫は最愛の妻を手にかけたのか あなたはどう裁く?」という催しを一日目と二日目それぞれ行った。ヒロは検察官役を割り当てられて起訴状を読んだ。それに対していろいろな弁護士が登場して弁論を行い、どの意見を支持するかという形である。

 模擬裁判の「法廷」は大教室だった。参加者には抽選で防災グッズとして懐中電灯・形態ラジオ・カップめん十個・ウェットティッシュが当たるということにした。法学部のみならず他の文系や医学部からも参加が見られた。

「福岡市東区在住の被告 八木健一郎 八十二歳は 五十六年間寄り添った妻 明子 七十八歳を自宅で首を絞めて殺害しました。 明子は四年前から認知症となっており 被告が一人で介護を続けていました」

 一人目の弁護士が弁論をはじめた。法科大学院にいる学生である。

「被告は 介護の疲れによる心神耗弱状態であります 寛大な判決を求めます」

 裁判を見ている者は裁判員という立場である。模擬法廷では被告人がいないため、弁護士に対して質問が飛んだ。

「あのぉ、どうして妻を介護施設に入れるということをしなかったのでしょうか」

「たぶん、被告人は被害者を自分の支配下においておこうとしたんじゃないですか」

 弁護士役が答えに窮したのを見てヒロは代わりに応じた。司会の裁判官役が「誘導しないでください」とたしなめた。

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