その先へ飛ぶこと〔54〕
前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m
団体待合室には地元のA放送が来ていた。ボランティア隊は二列に整列し、トモヒロが学生部長の訓示を代読する場面がカメラで撮影された。
「私たちN大学東日本大震災ボランティアは現地の復興を手助けするため、がんばってまいります」
代表の学生の宣誓も撮影された。それから一行はゲートをくぐって、ターミナルビルにつけられたB737へ向かった。トモヒロたちも3階の送迎デッキに上がった。デッキには灯油のような匂いが立ち込めていた。テレビカメラを持った人はデッキの一番端に行って離陸するシーンを撮るようだった。
ボランティア隊を乗せた飛行機が南の空に消えるとテレビクルーは社へ戻ることになり、五人で第二ターミナルのレストラン街で昼食をすることにした。トモヒロにとっては東京に住んでいたときに出張帰りに飛行機を眺めながら夕食をした懐かしい場所である。
「被災地支援といっても地理的な問題で継続していくのは大変ですよね」
注文を終えてから広報委員の教員がおもむろに言った。
「チャリティをやって義捐金にするという形にするのが現実的かもしれませんね」
トモヒロはそう応じた。
「もしも西日本でこういう災害が起きたときにどうするかが問題でしょう」
「何回トラフ自身でする・・・これは予め準備しておいたほうがいいのかも」
「首都直下とかもありますし、それに台風とかの豪雨災害だって」
「新潟と福島では梅雨の末期の大雨で被害が出たじゃないですか」
昼食を終えるとトモヒロたちはジャンボタクシーで大学へ戻った。会計は職員が済ませて処理である。
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