その先へ飛ぶこと〔30〕
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乗ってきた特急が反対向きに発車した。それから門司港行きの普通電車の出発である。左手にあった新幹線の高架が頭上を通り過ぎて右手に去り、電車は海岸沿いに出た。山が海に迫ったところを過ぎるとコンテナが並んだ北九州貨物ターミナルである。トモヒロは視線をそちらに走らせた。九州の鉄道は小倉で鹿児島と日豊に分岐するため、ここに基地を造るのが合理的だった。
門司駅のあたりは再開発で高層住宅が増えていた。トモヒロがN通運の研究所にいたときに出張でこの界隈はよく来たが、このようなものはなかった。電車は海峡に沿ってゆっくりと進んだ。前方に門司港駅の長いホームが見えると左手に国土交通省の吸収運輸局や北九州市の港湾曲が入る合同庁舎が見えた。大学に移ってからこの建物を訪ねることはなくなっていたが、研究所時代には足しげく通った場所である。
「ちょっと皆さんに見せたいものがあります」
電車を降りるとトモヒロは一同を呼び集めた。そこはゼロマイル標識の横だったが、本当に見せたいのは改札口にまっすぐ行かずに海側にある地下道のあとである。
「ここが本州との連絡船への乗り換え口でした。それが関門トンネルができて門司駅が九州の玄関になって、今では新幹線とか飛行機で直接各地の空港となったわけです」
改札を出てから駅舎をバックに記念撮影をした。駅前も以前はタクシーが建物のすぐ前に来ていたが、車が入らないように改造された広場には噴水が出来ていた。国鉄門司管理局そしてJRの北九州本社だった建物はそのまま残っていた。どこで昼食を食べようかということになって「焼きカレー」という案が出た。
赤レンガの洋館などを見ながら十分ほど歩くと船溜りに面した「海峡プラザ」というモールに着いた。土産物や食堂が入り、観光客がパラパラと歩いていた。何とか入れる店で「焼きカレー」を頼んだが、午後はどこを回るかで二手に分かれることとなった。トモヒロは「鉄道記念館」のグループにつくことにした。
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