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2013年10月14日 (月)

ロンゲストマーチ(44)

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m

 次に原田の力量試しが始まった。最初は辻である。開始早々に原田が面攻撃を仕掛け、辻は胴に返そうとしたが、受け止めただけに終わった。辻が小手を狙ったのに対して原田は合い小手・面を返し、旗が上がった。栄作は「やるなぁ」と呟いた。辻が取り返そうとして面に出たのを原田が胴に返して道場に乾いた音が響いた。再び審判の旗が上がった。

 原田は二人目の二年生に面で一本勝ち、3人目は引き分けた。引き胴で二回いい音がしたが、審判は旗を上げなかった。それは「中学とは違うんだぞ」と言いたげな感じである。栄作は中学なら上がるはずと思いながら見ていた。最後に岡部との戦いとなった。少し疲れが見えかけているのか原田は急に静かな剣に変わった。

 攻撃して来ないのにしびれを切らしたのか岡部が面に切り込んだ。原田が右に体を捌いて岡部の攻撃をかわした。審判は無言だが、二・三年の間から「おっ」という驚きの声が上がった。振り向いたところに原田は小手から胴へ変化する技を出した。道場に小気味のいい炸裂音が響き渡った。

「俺は有効と思うけど」

 面を外して見ていた。辻が栄作の耳元で囁いた。栄作も「旗上げてもおかしくないかな」と相槌を打った。最後は原田が少し遠い間合いから面に飛び込んだのを岡部が胴を抜いて勝負をつけた。野球場の隅にまで音波が届きそうな凄まじい打ちだった。

「俺は取られたかなと思ったよ」

 終わってから岡部が苦笑いした。一年の女子が「カッコいい」と思っている雰囲気だったので栄作は「こいつ、本当は幼い女の子にしか興味ないかもしれないから」と言いかけたが、飲み込んだ。

「歌うのはどこでやるのかな」

 まだ稽古着のままで辻が栄作に言った。時間は正午近かった。

「たぶん講堂の裏だろうなぁ」

 七十周年記念館の二階にある合併教室は女子のメイツが使っていたし、一階の生徒会室は足の踏み場がない状態である。講堂とプールの間にあるわずかな空間で前年のボーカルは練習していた。

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