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2013年10月13日 (日)

ロンゲストマーチ(43)

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m

「何か御用ですか」

 非常口から覗いている栄作に三年の女子部員が面を被ったまま近づいて尋ねた。栄作が「見ているだけです」と答えると別の三年生が「基本稽古のあと練習試合します」と言った。栄作は辻が自由になるまで待つつもりなので、見学することにした。

「これは軍事機密だけどな」

 面を外した岡部が「記録ノート」を開いた。前日の練習試合は一年生同士で、原田をはじめ一年男子5人がリーグ形式で戦った。原田は面と胴、小手と胴、胴二本、胴一本で四勝である。取られたのは一本もなかった。胴一本の相手が付属中出身の永田で中三で県大会に出たという猛者である。

「胴技が冴えていたんだなぁ」

 中学時代、栄作は原田に部内試合で引き胴と面返し胴を取られたことを思い出した。岡部は「授業と必修クラブで引退しても週二回はやっていたみたいだし」と応じた。

 原田は紺の稽古着と袴にワインカラーの胴を着けていた。それは岡部も同じである。入学祝に新調した防具で、胴の左上には家紋まで入れていた。

「みな歌の練習は午後からになるよ」

 辻が栄作に声をかけた。彼は普通の黒胴である。三月のクラスマッチでは栄作も久々に剣道の試合をした。辻の審判はぎこちなく感じたが、大きな失敗はなかった。

 原田と永田が二年生四人と連続で戦うことになった。インターハイの予選は終わり、七月下旬に福岡市で行われる玉竜という大会は勝ち抜き式で、どのくらいのスタミナを持っているのかという見極めが練習試合の目的である。

 まず永田が辻と竹刀を合わせた。審判は三年生が務めた。もう一つのコートでは女子の一・二年対決である。辻は先輩の意地で小手を取ったが、面2本を浴びて終了した。永田は二人目から面で一本勝ち、3人目にも小手を取られたが、面で引き分けた。

 岡部が進み出て竹刀を合わせた。道場から百メートル離れた山陽新幹線の高架を博多に向かう列車が通り過ぎた。立ち上がりに永田は反時計回りに旋回した。それは危ないと思いながら栄作が見ているとやはり面返し胴の餌食になった。終了間際に永田が小手を狙ったのに対して岡部はすりあげ面で突き放した。

 

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