« 東日本大震災(2108) | トップページ | 東日本大震災(2109) »

2013年9月16日 (月)

ロンゲストマーチ(16)

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m

 剣道を始めたときは野球のようにコンビネーションプレーがないのを物足りなく感じたが、一対一のバトルは投手対打者を思い出して気持ちが奮い立つようになった。強打者をどう討ち取るか相手の得意なコースと苦手なコースが紙一重であることもスリリングである。目の前に立った先輩が、去年から初めて最初の勝利で何を取ったのかわからないが、今日は胴技が冴えているのを見てしまった。

 安易に面を打っていくと胴をやられるので、栄作は打つタイミングを悟られないように前後左右にこまめに移動した。いきなり面に行くよりも自分に近い小手、そこから面へと行くコースもあった。先輩も栄作を面打ちに誘い出そうと竹刀をしきりに左肩にかつぐような仕草を見せた。面ががら空きになったのはワナと分かったが、小手が目の前にさらされているのに栄作の意識はマダ面だった。

 床をドンと鳴らしてみたり、わざと間合いを詰めたりしているうちに一分くらいが過ぎた。栄作は剣先が少し触れ合ったところから思い切って飛び込んだ。左面をこすった感触のあとにへその少し右に相手の竹刀の当たる衝撃が来て栄作はそのまま真っ直ぐに突き進んで振り向いた。二人が面、一人が胴に上げていた。そのあと少し打ち合いがあって時間がきた。

「じゃあ、大塚君とやりましょう。それと中田君は岡部君と」

 二年生で一番下になった者が呼び出された。大塚と岡部がそそくさと面を着けた。コートは一つだけになっていた。蹲踞から立ち上がった大塚は短く気合をかけた。いきなり二年生の小手を狙ったのは防がれた。

 先に取ったのは二年生のほうだった。小手・面ではなく小手・胴の二段攻撃で大塚の着けた胴が鈍くはじける音をたてた。2本目は大塚が号令と同時に面を打って追いついた。二年生が胴を抜こうとしたのがわかったが、一呼吸遅れた。最後は攻防の中で大塚がすばやい動きで小手を決めた。 

 岡部と竹刀を合わせた栄作は、今までの地稽古と全く違うことに気づいた。打たせてくれていたのが、剣先をグッと喉元につけられた圧力を感じた。栄作は反時計周りに旋回して面を打ちに出た瞬間、胴の右から左にかけて竹刀の物打ちが滑っていく感触を受けた。岡部はあっという間に左脇をすり抜けてこちらに剣先を向けていた。

 二本目は小手を狙ったが、はじかれて面を打たれた。勝負は二振りでついていた。終わってから栄作は「打っていくのわかったの?」と聞いてみたら「完全に」という答えがきた。本気で面や胴を打たれたのは初めてでとてつもない差を感じた。

|

« 東日本大震災(2108) | トップページ | 東日本大震災(2109) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ロンゲストマーチ(16):

« 東日本大震災(2108) | トップページ | 東日本大震災(2109) »