枯れた街(36)
前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m
赤いアーチの橋を渡ってポートアイランドに入るのは十五年ぶりである。この人工島が出来たのを記念して行われた博覧会に行った。その時は「ポートライナー」という新交通システムに乗り、色とりどりのパビリオン、高層ホテルや高層住宅、島の周囲を囲んだコンテナターミナルに未来都市を感じた。
それが道路は液状化現象でデコボコになり、場所によっては路面とポートライナーの土台部分が一メートル近く差ができたところもあった。ポートアイランドは南に拡張され、そちらはマダ何もない状態である。関西国際空港へのジェットフォイルが出ている船着場に着くと乗船手続きをした。オレンジ色のジェットフォイルは一時間毎に出ていて、所用時間は30分だった。
最高速度80キロというものの、船室の前にある電光掲示は72キロでストップした。大阪湾は意外に船が多く、飛ばせないのだろうと思った。関西国際空港の一番北にある桟橋に着くとバスに乗り換えてターミナルビルに言った。亀井主任研究員はJ航空に飛び乗り、私はA空輸の最終便の右窓側をリクエストした。そしてターミナルビルにあるレストラン街を回って気に入った店に一人で入った。
最終便の出発は午後9時である。真っ暗なので初めて乗るボーイング777の姿はよくわからなかった。それでもエンジンが737や羽田から小倉に向かうD航空のМD87の胴体と同じくらいの直径というので太さを感じさせられた。機内は747の座席が3ー4ー3なのに対して3ー3ー3となっていたので少しゆったりしたように感じた。
飛行機は滑走路の南側から加速を始めた。浮き上がったかと思うと空港島と岸和田を結ぶ連絡橋があっという間に小さくなり、大阪の夜景が広がる間もなく、左旋回が始まった。顔を窓にくっつけて大阪から神戸にかけての夜景に視線を走らせた。もう光の勢いの差はそんなに感じなくはなっていたが、これもすぐに見えなくなった。Uターンを終えた機体は和歌山上空をかすめる羽田への空路に合流しようとエンジンを唸らせていた。 (了)
次の作品の構想はできていますが、連日の暑さでテンションが落ちています
涼しくなったらスタートいたします
| 固定リンク
コメント