枯れた街(3)
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和歌山に向かうバスは10時半の発車で、飛行機が到着してから二十分だった。関西国際空港の到着ロビーは一階で、ここから大阪や神戸に向かうバスも出た。出発ロビーは二階で、JRと南海の駅改札口と同じフロアである。ホームはバス停と同じ高さだった。大阪に向かう電車は乗り換えなしだが、和歌山に行く場合、JRも南海も乗り換えが必要である。
和歌山県庁を訪ねるのは午後一時だった。新幹線で新大阪から乗り換えてとなるとやはり飛行機よりも一時間早く東京を出なければならなかった。バスは空港から和歌山まで一時間である。県庁の近くで昼食をするという腹づもりで私は室長とバスに乗り込んだ。乗客は10人前後である。別々に窓側に座っての旅路となった。
陸地との連絡橋は下段が鉄道、上段が道路である。長さ五キロは陸地から離し過ぎだった。昭和四十年頃のジェット機は離陸するときはロケットの打ち上げのようにバリバリバリとすさまじい音をたて、着陸時はエンジン内部のブレードの「キーン」という音が烈しかった。その後の騒音対策で、エンジンの音はかなり静かになっていた。
大阪の空港をどこに移転させるかということで、最初は神戸の沖ということが計画されたが、地元の強い反対で、大阪湾南部になった。昭和五十年代の終わりには神戸市が「ヤッパリ欲しい」と運輸省に陳情したが「何を今更」と書類すら受理されなかった。それでも諦めない神戸市は独自に空港を作る計画を立てていて、貨物施設に関する調査を市の港湾局から受託していた。
橋を渡り終えると阪和自動車道に入り、紀伊山地を抜けて和歌山へと進んだ。紀の川の流れる平野を見下ろすところはいい景色だった。インターを出てJRの駅に止まり、それから城の北にある市役所のそばで下りた。県庁までは少し歩くことになるが、適当な食堂を見つけて入ることにした。
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