枯れた街(14)
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午前六時に新大阪に向けて発車する「のぞみ」は運転見合わせとなり、その後に博多へ向けて出発する「ひかり」を名古屋までの運転にするという案内放送が行われていた。いつ発車するか未定で、指定席は全て自由席になるということだった。
とりあえず職場に電話してみた。いつも八時には来ている同期入社の峰岸が出た。
「おう。関西で地震があったみたいだけど、どこにいるんだ」
「東京駅にいる。新幹線は名古屋までは運転できるみたいなので、予定通りに行きます」
「神戸がかなりひどいみたいだよ」
神戸空港の調査のことが頭をよぎったが、とにかく名古屋が今は優先である。受話器を置くと五号車に乗り込もうと思ったが、ドアのところまでいっぱいだった。前に前にと行って結局一号車の後ろのドアから何とか入った。
「お客様にお知らせいたします。本日、午前5時46分頃、兵庫県南部で震度6となる地震があり、新幹線の施設にも被害が出ている模様です。当列車は博多までの『ひかり』でしたが、名古屋までノンストップとして運転いたします。なお、後続の列車は全て『こだま』のみの運転となります。発車は9時以降となる見込みです」
横五列のシートは既に埋まっていて乗り込んでくる乗客で、車両の中央部にまで入った。9時を過ぎてからようやく列車が動き出した。名古屋に出張するのは二回目であるが、いずれも『ひかり』自由席は楽に座れた。盆や年末年始はこんな感じだろうなと思った。実家の福岡には一度だけ『のぞみ』を使ったが、再び飛行機に戻った。
大原室長とは連絡がついていなかったが、委員会のメンバーは大半が名古屋なので、会場にたどり着くのが先決だった。通産省の外郭団体からは事務局長ともう一人女性スタッフが参加する予定だった。事務局長からは主に峰岸に電話が頻繁にあったが、携帯電話の番号は知らせていなかった。研究所のスタッフで携帯を持っているのは少数で、理由は出張している間に別件で振り回されたくないということである。一度峰岸の携帯に電話をしたら、トイレの個室で用を足している最中ということも起きた。
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