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2013年7月15日 (月)

枯れた街(6)

前回までの内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧ください m(_ _)m

 新千歳空港の駅は地下にあった。出発ロビーに上がると広田主任研究員が乗る予定の釧路行きの便は出発30分前になっていた。私はA空輸の自動チェックイン機で二時間後に出発する便の左窓側の座席を指定した。航空券を買うときは時間の指定はしていなかった。

 展望デッキに上がると秋のやわらかい日差しが降り注いでいたが、風は何となく冷たい感じである。滑走路の向かいはJRの線路になっていて、ディーゼル機関車が色とりどりのコンテナを積んだ貨物列車を引っ張っていた。前の週に運輸省鉄道局の調査に関する打ち合わせがあり、11月中旬に行われる第一回委員会に向けてどんな資料を作るかという話になった。

 広田主任研究員が乗ったと思われるМD81が滑走路に向かって移動をしていた。胴体後部にエンジンを二つつけた百六十人乗りの機体である。JRは札幌から釧路に向かう航空路線を撲滅しようと高速化の工事を進めていた。列車の所要時間が三時間なら航空との時間差は問題なくなり、札幌と函館の間では新型のディーゼル特急列車を走らせることから航空路線駆逐の作戦が始まった。

 透き通った青空に黒煙の筋を残してМD81が飛び去ると、四発の大型機が下りてきた。普通のA空輸塗装ではなく、クジラをイメージした特別の機体である。小中学生からデザインを公募して選ばれたもので、それが東京に帰る予定の便だとわかって内心小躍りした。一年前にデビューして今回で乗るのが六回目だった。一回目はちょうど一年前の福岡出張からの帰り、次が十二月で「最初で最後のトライスター」と思っていたらこれだった。たまたま搭乗口のテレビでニュースを見ていたら、トライスター導入に関する汚職事件に巻き込まれた田中角栄の死去が報じられていた。

 そのあとも福岡出張で三回乗ったが、搭乗券の隅に記された番号を基にした抽選はまだ一度も当たらなかった。もうすぐヘビーメンテナンスが行われて「普通のA空輸」に戻る前に何とかという思いが沸き起こった。抽選で当たるとクジラジャンボの模型がもらえた。

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