大阪感情線物語(30)
前回までの 内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧くださいm(_ _)m
昼休みは机の上にノートを置いたまま生協の食堂に行った。女子の中には弁当を持ってきていて教室で食べている人もいた。Mはいつもの定食の中身が少し気に入らなくてカツ丼にした。別の教室にいた今村がカレーをトレイに載せてMの斜め向かいに現れた。
「ソ連法の講義はどうなんや」
「意外と面白い話もあるよ。戦争を宣伝するのは犯罪になるんだって」
「侵略国家なのにねぇ」
「テトリスというゲームを作った人もたぶんシューティングをやると捕まると思ってそういうのにしたのかもしれないなぁ」
「ふうん、インベーダーとか駄目なのか」
「そっちはどうなの」
「先生は小説家になりたかったとか言ってて面白いよぉ。薮田先生ほどじゃないけど」
「あちらはアクションもあったからなぁ」
「そういえば・・・Eが文学賞に応募したみたいだけど、どうだったのかなぁ」
Eは同期でチョット変わった奴という評判だった。奈良の有名進学校の出身で、数学以外は全国模試でトップを取るほどである。大学に入ってから相当怠惰な生活になり、図書館の閲覧室で原稿用紙に何かを書き綴っていた。それは「文学界」「群像」「新潮」といった文芸誌に投稿するためのものだった。
「開高先輩に続くことが出来たらすごいよなぁ。どんなストーリーなんだろ」
「パイナップルを本棚に置いて大爆発するのを妄想するとか」
「それじゃ、レモン爆弾の盗作」
本屋に寄る事もなく、教室に戻った。他の人の机を見たらソ連法とは関係のない趣味系の雑誌とか宅地建物取引主任の資格試験のテキストがあったりした。
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