その先へ飛ぶこと(5)
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冬の冷たい風が新宿の街を吹き抜けている。トラックの技術に関するワーキンググループをトラック協会の会議室で終えたトモヒロたちはペデストリアンデッキで新宿駅へと向かった。入社した頃はこういうワーキングで昼食の弁当が出たりしたが、経費削減から昼食後に始まるというような形に変わった。
物流技術部の二人は、運輸省に出向くために地下鉄丸の内線に、トモヒロは職場に戻るためにJRに乗った。少しでも早く戻るためにオレンジ色の中央線快速に乗り、御茶ノ水で総武線各駅に乗り換えるつもりである。
十二月の初めにN大学からシラバスの提出を求める書類を送付されてトモヒロは室長に転職を告げた。室長の反応は「まさか」というよりも「やっぱり」という感じである。引継ぎをどのようにするかということで、退職願を正式に出した一月末から経済研究部の中で調整が始まった。
シラバスの提出期限は二月十日で、その前に大学の教務に送付した。物流産業論では「物流とは時間と空間の隙間を埋めるもので、輸送・荷役・保管・包装・流通加工・情報システム」から構成されているというフレーズを入れ、テキストは研究所の先輩でK大学教授となっている沢村の著書を指定した。
他には専門のゼミと二年生向けのプレゼミも担当することになった。プレゼミについては、高校までのクラスのような単位だと各大学の先生から聞いていた。プレゼミのほうでは運輸関係の業界を研究するということを主眼においた。それは物流だけでなく、鉄道、航空、旅行代理店まで広げてである。
トンネルを抜けて四谷、皇居の外堀、東京ドームと車窓が変わり、神田川べりの崖にへばりつく御茶ノ水駅で黄色に電車に移動した。秋葉原デパートの改札もいつの間にか駅員に定期を見せる形から自動改札に置き換わった。入場記録を全ての改札でチェックして「キセル」をブロックすると運輸関係の研究会で聞いた。
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