大阪感情線物語(15)
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極楽橋も難波と同じく行き止まり式の駅である。今度は先頭車両が一番便利になった。先着していた四両の急行から降りたグループがМたちの到着を待っていた。こちらは商法の藤本先生を含めて十二人である。極楽橋からは「こうや号」と同じ赤と白に塗られたケーブルカーで高野山駅に上がった。ここからバスで高野山の中心に移動した。
宿坊は金剛峰寺の近くにあり、チェックインする前に金剛峰寺を見た。それから夜の宴のために酒を調達した。運ぶのは一・二回生の役割である。場所柄それほど大量には持ち込むのを遠慮したが、それでも日本酒のように度数の高いものが半ダース、缶ビールは全員に三本は当たる量である。
宿坊は全て和室だった。部屋割りは男女をちゃんと分けてなされた。夕食の前に一時間ほど三年生からの発表が行われた。J航空の事故でアメリカの航空機メーカーとの「共同不法行為」が成立するかというものである。発表者はメーカーの修理ミスに重きを置いたが、日常の点検が不十分という指摘が四年生からなされた。
先生の見解は加藤先生がメーカー、小村先生と藤本先生はJ航空に責任の重点をおいた。Mは話の流れになんとかついて行ったが、いろいろと起きるであろう裁判は刑事・民事・行政と様々である。民事では墜落するまでに三十分も迷走したので乗客が受けた苦痛もそれだけ大きいという議論があった。
行政に関しては運輸省の耐空証明が問題だったし、刑事ではパイロットの判断に過失があったのかどうかということである。海上に不時着させれば被害は軽減できたという意見であるが、実際は不可能だろうという反論も強かった。それらは全て相談部でも議論の対象に入っていた。
夕食は大広間での精進料理だった。膳が下げられるといよいよ宴ということになった。缶ビールにおつまみ、紙コップが並べられ、さらに中央には日本酒が並んだ。まず四年生から卒業にあたっての決意表明が行われた。
「和歌山県庁に入ることになりました。勤務先はどこになるかはわかりません。白浜とか遠くになるかもしれませんが、そのときは合宿にお越しください」
「大学院に進んで司法試験チャレンジを続けます。去年は択一を突破できましたが、今年は論文もクリアしたいです」
「奈良県の高校教員試験に合格して現代社会を担当します。後輩を送り込めるように頑張ります」
「S銀行に入ることになりました。相談部の会計はよろしくです」
「H製作所に入ることになりました。テレビや冷蔵庫よろしくです」
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