大阪感情線物語(21)
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金曜日の午後が空き時間になっているのは一年のときと同じだった。一週間の最後は刑法総論で法学部二年生のほぼ全員が受講しているので、待ち合わせに利用されていた。Cクラスの忘年会は午後六時からミナミでボウリング大会をして表彰式と飲み会という流れだった。
一度帰宅してもいいのだが、Mは図書館で過ごした。図書館は一号館のそばにあり、法学部教員の研究室の入る部分と閲覧室から構成されていた。閲覧室の天井は二階までの吹き抜けになっていた。Mは法学部の大先輩で芥川賞をもらった開高健の作品を読んだりして午後四時まで図書館にいた。
ボウリングの前に少し腹ごしらえしておこうと思ったMは杉本町駅に新しくできたハンバーガーショップに行くことにした。駅は木造平屋から二階建てのモダンな建物に替えられ、二階に改札口、一階に国鉄直営のハンバーガーショップが入った。以前からある跨線橋はそのまま改札口につながった。
ハンバーガーショップの出店に駅前商店街は反対し、駅のすぐ前のクリーニング店に看板が掲げられた。商店街の食堂の相場は七~八百円、ハンバーガーはセットで500円である。もっとも大学の生協はそれよりも安かったので、学生の選択は決まっていた。駅の建て替えの際にキャンパス側に改札を作るという計画にも商店街は反対していたので、Мは商店街を一切無視というスタンスだった。
キャンパス側に改札を作るとなると貨物線が問題だった。国鉄は十一月に分割民営化前の最後のダイヤ改正を行い、貨物線を走る列車がなくなった。大阪湾南部に計画されている関西新空港への奈良からの直通列車を走らせるなら貨物線を撤去するという選択はありえなかった。
ハンバーガーショップにいるのは電車の運転士や車掌だった人だと聞いた。九州・四国・北海道からは首都圏への配置転換を受け入れるか退職するかという状態になっていた。大学の授業でも「国鉄の分割民営反対」というビラが机に置かれていたりしたが、民営になると安全が軽視されるという主張は阪急を毎日利用しているМには違和感があった。
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