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2013年5月14日 (火)

大阪感情線物語(12)

前回までの 内容は「文化・芸術」のカテゴリーでご覧くださいm(_ _)m

 女子と同じくH大とK大からの対戦で始まったので、相手となる選手を観察する機会は十分にあった。H大の選手は細身でK大のほうは胴回りが太かった。H側の小手をKのほうが面に抜き、さらにHの選手が面に出たのを返し胴で片付けた。試合はK大の九勝二敗四引き分けである。

 H大との先鋒戦は出ばな小手で一本先に取り、二本目は相手の左わき腹が空いたのをすさまじい音の出る打撃で決めた。味方の拍手を背にМは久しぶりの試合に臨んだ。蹲踞から立ち上がって半歩前に出ると相手は引いた。ゆっくり間を詰めて剣先に触れてみると自分のほうが勝っていると感じた。

 相手が半時計回りに動くのをМは感じた。出ばなの面と思った瞬間相手が打ってきた。Мは鎬で受けると手首を返して胴に切りつけた。鈍い音が道場に響き、反対側に抜けるとすぐに相手に剣先を向けて反撃を制した。三本の旗が上がる気配を感じ、味方の拍手が耳に飛び込んだ。

 2本目は相手が取り返そうと小手に来たのを小手・面で返した。鍔迫り合いにするよりも間を空けようとМは左足を横に開いて重い竹刀を中段に戻した。意識はしていなかったが、相手の右わき腹で甲高い音がした。今度は一人が旗を上げていなかったが、二人が上げていたので勝負がついた。

 もう一人の一年生も合い面で勝って、小手を取り返されたものの、面返し胴で勝ち星を得た。終わってみると六勝六敗三引き分け、本数差でOC大の勝ちとなった。

「いやぁ、すごいなぁ。インハイ優勝者から二本取っただけある。あんな感じの胴だったのかな」

 Мに助っ人を頼んだ人が声をかけてきた。Мは「勝った試合って意外に記憶がないんです」と応えた。木下さんも「こういう一面もあったんですねぇ」と驚きの表情で言った。

 K大との試合が始まるので再び面を被った。向こうは休養十分である。たぶん観察されているだろうなとMは意識した。先鋒ではまた小手で先行した。しかし、二本目は面に対して胴を抜いたのを振り返り様に面を打たれて引き分けになった。Mは息を深く吸い込んで、試合場に進み出た。

 

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