大阪感情線物語(13)
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相手の小手攻撃をしのいだMは小手・面の連続を意識した。相手が面に抜こうと手元を上げたのですかさず胴に変化したら旗が一斉に上がった。再び味方の拍手が耳に入った。二本目は相手が取り返しに来るものとみて様子を見ながらの戦いを心がけた。Мは竹刀を左肩にかついだ。それに反応して面に来たのを右斜め前に踏み込んで相手の胴をなで斬りにした。反撃してきた相手の左こぶしがМの剣先にひっかかったが、主審の「胴あり」という宣告が聞こえた。
元の位置に戻ろうとするときに副審がМに駆け寄った。OCのシールが剥がれて床に落ちたので貼り付けに来たのである。K大のほうからどよめきが沸いた。相手は本来のゼッケンに気づかなかったようだった。そのあとのK大の逆襲はすさまじく、七連敗を喫した。四人が引き分けに持ち込んだものの、最後は大将が胴を取られてK大の男女優勝が決まった。
「シール剥がれたのはハプニングだったなぁ」
表彰式のあと、四年生が苦笑いした。翌年はH大の当番で、その次はK大だが、助っ人は今年限りでというのがМの本音である。K大の応援にはK高OBもいて稽古状況を尋問された。正月二日に母校で現役とOBの合同稽古があるが、防具を持ってくるようにと言われた。
木下さんたちはいつの間にか退出していた。 Мは大学の三十歳くらいのOBの車で住吉大社の南の通りを東に行った阪和線の長居駅まで連れて行ってもらった。そのOBはМ高校の出身で、法学部を出て堺市役所に勤めていた。別れ際に「一生続けられる競技だから」と言われた。
長居駅も線路が四本あって通過待ちが可能だった。朝の電車は天王寺から杉本町まで通過待ちなしで来ていたのが、ダイヤ改正で長居で通過待ちをするようになった。それで「通過待ち反対同盟」という非公認サークルまで現れていた。天王寺行きは待避線に入ってきた。運転席の後ろのドア際に立っていると鳳から南で各駅に止まる区間快速が追い抜いて行った。
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