大阪感情線物語(16)
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飲んでいるうちに三年生の次期リーダーから「おいМ、お前木下さんに気があるんだろ」とからまれた。Mは「それはまぁ」とあいまいな返事をした。大学自体、男女の比率は文学部や生活科学部を除くと圧倒的多数が男だった。それでいて可愛いと言われるタイプは少なかった。しかし、木下さんはたぶん「ミスOC大」というコンテストをやればタイトルを取れるのではないかと心の中で思っていた。
「そういう気配を感じるんだよなぁ。で、俺はなぁ勝負したっていいんだぞ」
「何をでしょうか」
Мは当惑した。木下さんは別のところで四年生に囲まれていた。
「俺も剣道二段だし、それで勝負して負けたほうが手を引く、でどうだ」
「先輩もされていたんですか」
「高校の途中までな」
その先輩の出身校は大阪城の近くにあるO高校である。府立では木下さんの出たK野高に天王寺の近くにあるT高校、堺市のМヶ丘高校が御三家といわれるがO高を加えて「四天王」という説もあった。
「あのぉ、三大学戦でМクンは二戦二勝してて、インハイ優勝した人にも勝った事あるんですよ」
木下さんと一緒に住吉武道館に来ていた女子の先輩が言った。
「剣道と違うもので勝負したほうがいい」
じっと聞いていた別の三年生が呟いた。四年生の集団からは「文学部のKさんがどうのこうの」という声が聞こえた。その人は甲子園で優勝したP学園で巨人を希望しながら同じチームの投手にドラフト指名が行ってしまった強打者の姉だった。
大広間の使用は午後十時までだった。朝の五時には任意だが寺の行事があるからである。それまでに酒は飲みつくされてしまった。Мは体の火照りを感じながら布団に潜り込んだ。
目が覚めたのは朝四時過ぎである。まだ起きるには早いのだが、大便がしたくてたまらなかった。同室の者の間を抜けて廊下に出て端っこにアル厠所に行った。二つある「個室」はどちらも和式で、水溜りはなく、直径が十センチくらいの丸い穴というタイプである。穴の上にしゃがんで腹に力を入れると「ヒュー ボタァァァン」と一塊が落ちた。
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